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休憩時間を考慮することで下肢虚血が回復した状態で歩ける

▼ 文献情報 と 抄録和訳

"私は残るべきか、それとももう行くべきか?" PAD患者の歩行能力に対する回復時間の効果

de Müllenheim, Pierre-Yves, et al. "" Should I stay or should I go now?" Recovery time effect on walking capacity in symptomatic peripheral artery disease." Journal of Applied Physiology (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 本研究の目的は,症状のある下肢末梢動脈疾患(PAD)において,最大歩行の繰り返しを通して,回復時間が歩行能力(WC)に及ぼす影響を調査することであった。

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Peripheral Arterial Disease: An under-recognized, slow-burning emergency;Cardiovascular Services, Your Health』より引用

[方法] PADの参加者21名を対象に,次の3つの実験条件(回復時間0.5~9.5分+自己選択回復時間(SSRT))で,回復時間が歩行能力(最大歩行時間)に及ぼす影響を検討した:1)2回のトレッドミル歩行を11回繰り返す(TW-ISO),2)7回のトレッドミル歩行を1回繰り返す(TW-CONS),3)7回の屋外歩行を1回繰り返す(OW-CONS)。虚血の間接的な指標として,運動時の経皮的酸素圧の変化を連続的に記録した。WCが実質的に増加しない個人回復時間(IRT)は、対数的にフィットした参加者において決定された。

[結果] グループレベルでは、混合モデルにより、回復時間が水位の回復に有意な効果(P < 0.001)を示した。参加者レベルでは、強い対数関係が見られた(中央値の有意なR2≧0.78)。SSRTの中央値は、作業/休息比の中央値が1:1以上(すなわち、対応する以前の歩行時間を考慮して回復時間が短い)に対応し、未回復の虚血と80%未満の水位回復レベルに関連していた。仕事と休息の比率の中央値が1:2以下であれば、虚血の完全な回復と水位の完全な回復が認められた。IRT比は1:1から1:2の間で、虚血からの回復開始に対応していた。症状のあるPADにおいて、最大歩行を繰り返したときのWCの回復レベルは、回復時間に影響される。

[結論] 本研究では、症状のあるPAD患者の歩行能力に対して、回復時間が有意でほぼ対数的な影響を与えることが示された。本研究では、中央値の仕事と休息の比率が1:1を超えると、虚血が回復していない状態で歩行を再開することになり、歩行能力を完全に回復させることができないが、仕事と休息の比率が1:2以下であれば、歩行能力を完全に回復させることができることが明らかになった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

歩行により一時的な虚血状態が作られ、休憩によってじわじわ虚血状態が回復してくる。これまで、このイメージを持って患者さんに接してきていなかった。循環動態は酸素供給、栄養供給を可能とするもので、それが十分保たれた状態で歩行練習を行えることは、介入効果にも影響を与えうると感じた。

偉大な古作品は一つとして鑑賞品ではなく、
実用品であったということを胸に明記する必要がある
柳宗悦

今回の研究は、『臨床応用・実行』に直結する結果・結論の提示をしてくれている。その点、一本の論文として非常に有用なものだし、論文執筆における結果・考察の示し方の好例として活用されるべき論文だろう。
歩行:休憩=1:2、これをPAD患者のリハビリテーション時の黄金率として刻もう。