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被引用数・IFは、『学術的成果』という側面しか捉えていない -リサーチインパクトの視点をもて-

▼ 文献情報 と 抄録和訳

論文や引用を数えることは、単に無意味なだけではなく、臨床研究のインパクトを覆すインセンティブとなる

Büttner, Fionn, et al. "Counting publications and citations is not just irrelevant: it is an incentive that subverts the impact of clinical research.” BJSM (2021): 647-648.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 毎年、100万人以上の科学者が査読付きの研究を発表しているが,発表された健康研究は,患者,政策,経済,社会に影響を与えているのだろうか?科学者の分野への貢献を示す一般的な指標として,査読付き出版物による被引用数,インパクトファクター(IF)などが挙げられるが.研究の社会経済的な影響を捉えていないように思われる.このレビューの目的は、スポーツ・運動医学界にリサーチインパクトの概念に注目してもらい、リサーチインパクトを評価する既存の方法を紹介し、リサーチインパクトを測定する上での課題を明らかにすること。

[レビュー概要] リサーチインパクトとは、研究が学術を超えた様々な分野に与えるプラスの効果、影響、恩恵と考えられている。被引用数・IFのようなアカデミックアウトプットに対して、3種類のリサーチインパクトをスポーツ・運動医学における実例とともに紹介している。3種類とは、<政策的影響><経済的影響><社会的影響>である。

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↑↑↑ SuperHumanによる日本語要約-表

そして、リサーチインパクトの評価指標とそのプロセス、なぜリサーチインパクトの評価が困難であるかについて述べている。『報酬を得られるものは、実行される』→臨床研究の真の目的がアカデミックアウトプットではなく、リサーチインパクトにこそあるのであれば、今一度、学術的なインセンティブを再考し、再構築する必要がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

ぼんやりと感じていたことが、明確に書かれていた。「何のために臨床研究をするのか?」「臨床研究をすることで得られる成果・見える成果」との間に、ラグが存在していたのだ。まず、前者をもう一度しっかり考えたい。そして、その前者にきちんとリンクするような見える化やインセンティブが用意されるべきだろう。