孤立するほど輝く陰謀論
はじめに
まずはこちらのニュースから
コロナ対策めぐり大阪府知事ら脅迫「利権まみれのてめぇらには」 被告人は「国民を代表して抗議」と正当化
「利権まみれのてめぇらには死が似合う」などの文書を送付したとして、脅迫罪で起訴されていた50代男性に対し、大阪地裁は今年（2023年）10月、懲役2年6月（求刑同じ）、執行猶予5年の判決を下した。
西村経産相脅迫の男は「おぶせくりちゃん」の中の人だった 長野・小布施町の元職員、SNSでコロナ対策批判
小布施町によると、男は２０２０年１２月、教育委員会職員として町公式マスコット「おぶせくりちゃん」のツイッターの運用を担当していた。
当時、町は感染対策の徹底を呼びかけていたが、このアカウントで「ただの風邪らしいクリ～」「人間は不要不急でできてるクリ～」などの投稿が相次ぎ、ネット上で物議を醸した。
陰謀論が「権威や権力によって歪められ隠蔽された不都合な真実」を暴いたと嘯くものである事は周知の通りですが、数多ある「不都合な真実」の中から陰謀論者によって選ばれた(ウケた)ものには、概ねある種の特徴があります。
・科学的裏付けがとれない
・大衆に受け入れられていない
・誰かの成果や努力を貶めるもの
などです。
「人々が陰謀論がハマる理由」については各種メディアも触れていますが、世の中の物事全てに対して「意図」「合理性」を求める人はよく「日々の出来事には必ず理由があって、自分にとって都合の悪いことは誰かの悪意で引き起こされているのだ」と解釈しがちなのだそうです。
例えば不景気一つとっても、不景気の陰で儲かっている奴がいて、その者らが意図的に不景気を招いたのだ、と結論付けるわけですね。
「風が吹けば桶屋が儲かる」のは「桶屋が風を吹かせたから」というわけです。
不都合の原因を宗教的・神霊的解釈に求めず人間の陰謀に求めるのは、その人の科学リテラシーゆえに宗教との相性が悪かったからで、動機にはさほど違いはありません。
政治的陰謀論と疑似科学(水からの伝言や血液型性格分類など)は極めて距離が近く、そして疑似科学とオカルト(神秘主義や超常現象など)は地続きです。
新興宗教などがインテリを「落とす」突破口としても陰謀論は有効です。
孤独の強み
では人々に科学的リテラシーに加えて陰謀論耐性を持たせる教育を施せばいいのかというと、それは解決策になりません。
先に書いたように、大衆に受け入れられないことも陰謀論者のウケがよくなる要因なのです。
若い方、特に平成二桁生まれの方には信じられない事ですが、1970年代に一世を風靡した「1999年人類滅亡説(ノストラダムスの大予言より)」は90年代後半になってより輝きを増したのです。
東西冷戦が終わり核の危機も忘れられ、タイムリミットの99年まであと少し、とてもじゃないが今の人類が戦争などで滅ぶとは考えられないとなった時に、今更ながら終末論に熱狂する人々が弁を振るい、あるいは武器を振るいました。
カルト宗教の信者は友人や親族が反対するほどにのめり込み、嗤われるほどに団結します。
近年ではQアノンなどが勃興し信者数を稼いでいますし、地球平面説や月着陸否定説もしぶとく生き残っています。
騙されないつもりの人へ
個々人が陰謀論や信仰を求める理由は多岐にわたります。不遇や不平不満だったり、他人に対し知的または道徳的優位に立ちたいという欲求から、という場合もあるでしょう。そんなものを詳らかにしても得るものはありません。
今回皆さんに知って欲しいのは、先に挙げたウケる陰謀論の条件です。これらを理解していれば、悪い誘いを見抜くことができますし、距離をとることができます。
再度記しておきます。
・科学的裏付けがとれない
・大衆に受け入れられていない
・誰かの成果や努力を貶めるもの
この三点以外にも見抜くポイントは多々ありますし、三点に合致しているにもかかわらずそうと悟らせないよう装っていることもあるでしょう。陰謀論インフルエンサーの話術が巧みだったりもするでしょう。ですが、時間をかけて相手の話を噛み砕く中でボロが出るものです。
是非とも理解には時間をかけてください。
カルトや悪徳商法の勧誘は時間をかけて理解されることを嫌いますから、しっかりと時間をかけてください。
悪い誘いを打ち砕くのは論破することや説得することではありません。それでは勧誘側と同じ穴のムジナです。
今月も皆様のサポートのおかげで生活保護申請せずにすみました。心より御礼申し上げます。