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自衛隊に入れとは言ったけど

何度も「人生詰む前に自衛隊に入れ」的な記事を書いてますが、現代において警察・消防・自衛隊が被差別階級であることも事実です。

主に二つの理由があります。
・それらの職業が「ケガレ」に触れるものである、という日本的価値観
・資本主義社会ならではの価値観

まず後者について説明します。

警察官をはじめとする公安職の一部は、その職にある限りつきまとう「生命の危険」に比して、あまりにも賃金が低いのです。

公務員だから仕方ない、と多くの人は考えがちですが、それは全ての市民が公に奉仕する大志を抱き、治安の維持や環境美化に専念する世の中になってはじめて認められる理屈です。
他人が望まず蔑みさえする職に身を捧げる人々に対してふさわしい態度ではありません。

現代人は報酬を見てその人の評価を変えてしまうことが多々あります。
公正世界仮説 - Wikipedia

低賃金で「何ものをも恐れず、何ものをも憎まず、良心のみに従い」「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め」「全体の奉仕者として誠実かつ公正に」職務の遂行にあたる人々をして、何らかの業を負っているかのように扱うのが、現代人の「公正世界仮説」的職業感です。

では賃金が改善すれば評価は上がるのか?
それは約束できません。
低賃金を理由とする低評価は現代的な価値観にすぎないからです。

最初に触れた日本的価値観は賃金などでは変えることができません。
「穢れ多い職業」に対する差別意識はここ千年ほど解消されずに来ました。
平成以降「穢れ多い職業」に対して感謝の念を抱く人も増えているように見えます。ですがお天道様の下で他人の職を悪く言う人の方が稀ですから、過剰な「感謝の念」こそ差別意識の裏返しと看做すべきでしょう。フェミニスト男性が性差別的、暴力的だったりするのと似てますね。
公務員以外でいうと、清掃業は現代の「浄人(きよめ)」であり、警備員は「長吏」です。これらの職が、例えば何の生産力もない学生からどう見られているかわかるエピソードもあります。

トイレ掃除の女性を馬鹿にした学生。しかしある男性の一言に彼らは凍りつく

以上を踏まえて、薄らとした職業差別意識が確かに存在し、それが我が国の文化的土壌から生まれるものだとご理解いただけるでしょう。改善には労力が必要であることも。

付け加えると、何も世界で日本人だけが職業や階級に対して差別意識を抱くわけではありません。
インドにはカーストがありますし、英米では日本の比ではない苛烈な人種差別・LGBTQ差別・障害者差別——それに伴う社会階層差別があります。
ですが、考えてみましょう。日本では「穢多・非人」が必要とされ、各時代の政治指導者はそれらの人々を制度で支えてきました。
明治以降の百年ちょっとの間、なぜか優遇策だけが撤廃され、それらの職業と社会階層が存続し、なお新たな被差別階級が誕生しているという歪な状況です。
人々の苦痛を減らすという観点から見て、どのような方策がもっとも平等といえるのでしょうか。

今月も皆様のサポートのおかげで生活保護申請せずにすみました。心より御礼申し上げます。