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【オサムとアトムと 番外編】アトムと「MONSTER」と「PLUTO」

「PLUTO」は、「鉄腕アトム・地上最大のロボット」のリメイク版ですが、「MONSTER」は、ある意味「裏アトム」と言えると思います。

「MONSTER」の主人公の「Dr.テンマ」は、「天馬先生」「天馬医師」という意味ですが、「天馬博士」という意味にも通じます。

「鉄腕アトム」は、天馬博士が造った「正義の味方の少年ロボット」が主人公の物語ですが、「MONSTER」は、Dr.テンマが「怪物の少年」をよみがえらせてしまった物語です。

怪物

「PLUTO」では、アトムに対して「怪物」という言葉が使われています。


手術を受けた後、長期の昏睡状態から意識を回復したヨハン
修理を受けた後、長期の停止状態から覚醒したアトム

「MONSTER」の目覚めたヨハンと、「PLUTO」の覚醒したアトムの描写は非常に似ています。偶然ではないと思います。

ところで実は、この「怪物」という要素は「鉄腕アトム」自身にもすでに内包されているのです。

「PLUTO」の元ネタである「地上最大のロボット」で、百万馬力に改造されたアトムが「ばけもの」呼ばわりされるシーンがあります。

アトムはその驚異的な能力のために、ある意味「怪物」「モンスター」的存在なのです。


ヒゲオヤジ

「ヒゲオヤジ」は、「鉄腕アトム」と「MONSTER」「PLUTO」を結び付ける人物です。本名は伴俊作といい、「鉄腕アトム」では、アトムの小学校のクラスの担任でした。

ヒゲオヤジ

勿論、「MONSTER」には、ヒゲオヤジは登場していませんが、Dr.ライヒワインは、風貌が「ヒゲオヤジ」です。Dr.テンマの無実を証明するのに奔走する姿も、アトムを助ける頼もしいヒゲオヤジを彷彿とさせます。浦沢先生が、Dr.ライヒワインを「ヒゲオヤジ的存在」として描いたのは間違いないでしょう。

そして「PLUTO」でライヒワインは、いよいよ「伴校長」(ヒゲオヤジ)として登場します。クラス担任から随分と出世していますね。

鉄腕アトムのヒゲオヤジは、アトムの学校のクラスの担任ですが、元私立探偵で格闘技の達人です。

Dr.ライヒマンは精神科医ですが、元国境警察の警察医で、やはり格闘技の腕前はかなりのものです。まさに「ヒゲオヤジ」です。


テンマのネクタイ

「テンマのネクタイ」というモノがあります。(私が勝手に呼んでいるだけですが)

エヴァが婚約中にテンマにプレゼントした物で、ルンゲ警部はテンマが殺人犯である事の証拠と考えます。(勿論、冤罪ですが))

テンマがヨハンと再会する場面でも同じネクタイをつけています

物語がそろそろ終盤に近付いてきた14巻、15巻で、「テンマのネクタイ」が再登場してきます。

マルティンという男が、「組織」からエヴァのボディーガードを命じられます。
エヴァはヨハンを探す役目を命じられていました。

エヴァはマルティンに、昔テンマに贈ったスーツとネクタイを着させます。

マルティンは「いやな仕事だ」「いやな仕事だ」と繰り返し繰り返し思いながら、段々とエヴァの境遇に同情するようになって行きます。

エヴァがヨハンを探し当てると、組織はマルティンにエヴァを殺すよう命じます。

しかし、マルティンはその命令を拒否し、エヴァを逃げさせることにします。

エヴァは、一緒に逃げようと提案します。 

テンマはマルティンの死を伝えにフランクフルト中央駅のエヴァの元に行きます。

マルティンはエヴァを守ったために命を落とします。「俺は・・幸せだ・・」「エヴァが・・俺を・・・」「フランクフルト中央駅で・・」と言いながら。

マルティンはエヴァのボディーガードを命じられましたが、「PLUTO」の主人公のロボット刑事ゲジヒトは、ロボットを憎悪するハースという人物の護衛を命じられます。

ハースは事あるごとにゲジヒトに憎しみをぶつけます。実は、ハースの兄は、ゲジヒト夫妻の子供型ロボットを酷い方法で破壊していたのです。ゲジヒトは憎悪に駆られてハースの兄を殺してしまいました。しかし、その記憶は当局によって封印されていたのです。

やがて、悲惨な記憶を取り戻し衝撃を受けるゲジヒトですが、自らの任務を果たす事を決意します。

ゲジヒトは、身を挺してハースを守ります。     

ゲジヒトもテンマのネクタイをつけています。(右上がりでテンマとは向きが逆ですが)

マルティンがネクタイをつけた最初のシーン、鏡に写っているのでゲジヒトと同じ向きになっています。

テンマ→マルティン→ゲジヒトと「テンマのネクタイ」は受け継がれているのではないでしょうか。「MONSTER」の主人公と「PLUTO」の主人公が同じネクタイで結び付けられている。

単なる妄想です。
しかし、そう思いたくなるほどテンマもマルティンもゲジヒトも、とてもとても魅力的な人物で、彼らのエピソードには心を揺さぶられるのです。



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