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連載小説|鏡像 5話


前回の話は⤵︎ ︎

連載小説|鏡像 4話|りん #note https://note.com/super_hawk293/n/n562898e7a01a

 

ネットを介して唯一の友人ができたのだ。

私はその子をあいと呼んだ。

外見は、華奢でタレ目、頼りないようにも見えた。

よく言ったら優しそうだった。

意志のなさそうなその目と合った瞬間私はすぐ仲良なれると感じた。

普段私から話しかけないのにこの時ばかりは妙に私ばかりが話していたと思う。

私がその子を下に見てたからかもしれない。

その目を通して遊の姿が見えた。まるで鏡を見ているみたいだと驚愕した。

その光も当たらず暗い部分しか移さない目を見て

私に似て可哀想だから助けなきゃいけないという使命感に駆られた。


私はきっとこの目から鏡の反射のように私を見ていたんだ。


私の予想とは違い、

あいは、話上手でもあり聞き上手でもあったのだ。まるでコミュニケーション達人だと思った。

だからあいと仲良くなるのに時間はかからなかった。

私はこの子を鏡の反射のような存在だと思ったことに恥じた。

この時の私は頭がおかしかったかもしれない。

近年話題になった仮想空間のやりすぎての時差なのか? 

私はあいと仲良くなればなるほどギャップを感じるのだ。

内面にも自分の鏡であることを欲したのだ。

だから大胆にも秘密を打ち明けるたのだ。

他人の前で弱さなんか見せたこともない遊だが

この時は掠れた声で弱々しかったと思う。

その瞬間だけは着飾ってる姿ではなく生身の人間の姿に映ったかもしれない。

「あ、あのね、私実は女の子なんだよね、男のアバター使ってるけどさ」

そう言い、緊張した趣であいの返事を待った。

「実は俺それの逆なんだよね」
と咳き込むほど笑いながら答えた。

「うそ!?あいって女の子じゃないの?たしかに一人称俺で違和感抱いたけど声が中性的で気づかなかった」

その返事は私を、生身を受け入れられたに違いないと。歓喜していた。

話せば話すほど似てる部分が多かった。

やはり、私とあいは写絵なのだと。

嬉しさで溢れた。

だからこそ私達はこの出会いを運命とすら思った。

突然あいがこう言い始めた。

「ユウくんもさ、こっちのコミュニティに来いよ」

この時ばかりは運命を感じ、その集団に出会うのも運命だろうとすら思い、いえすの返事を出した。

コミュニティに来てみると驚くことばかりだった。

あいと全くそっくりな人達しかいなかったからだ。

私が入るとそこにいる人達は一斉に私を異物のように見だした。

まるで舞台を見ているようだと感心していた時

あいが

「この子は大丈夫。今日から俺らの仲間だよ」

あいに小言で

「これどういうこと?あなたに似た人ばかりじゃない…」

それを見て妙に目立つ私を見てみんな、「あはははは」と笑い出すのだ。


「ここはね、リアルを生きることに反対するコミュニティなんだ。俺たちはリアルで何を見てきた?悪を見てきただろ差別と嫉妬の嵐。俺らを見てよ性別すらも超越したコミュニティさ。皆同じ服を着て同じ思想を持ち同じことを感じるんだ。
楽園さながらだろ?」
 
さっきまで笑っていたもの達は一斉に静まりこちらをじとっと観察しはじめたのだ。


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