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お月見

 中秋の名月はもう過ぎてしまったけれど。(今年は九月十七日だった。)
 「中秋」は「仲秋」と書くこともある。どっちが正解というわけではなくて、それぞれ意味が違うようだ。
 旧暦の秋は七月八月九月で、七月を初秋、八月を仲秋、九月を晩秋と呼んでいた。つまり「仲秋の名月」は「八月の名月」という意味らしい。また、秋のちょうど真ん中の日を中秋といい、これは八月十五日のこと。つまり、「中秋の名月」とは「八月十五日の名月」という意味なので、十五夜のときは「中秋の名月」と書くことが多いらしい。

 旧暦八月十五日にお月見をするのは、中国から入ってきた風習のようだが、日本独自の風習として、昔は旧暦九月十三日にもお月見をしていた。 十五夜(中秋の名月)から約一か月後に巡ってくる十三夜は、十五夜に次いで美しい月だといわれ、十五夜または十三夜のどちらか一方のお月見しかしないことを「片見月」と呼んで、縁起が悪いと考えられていたようだ。
 十五夜は月見団子と併せて芋(里芋。きぬかつぎ)を供えるので「芋名月」、十三夜には栗や枝豆を供えることから「栗名月」「豆名月」ともいう。今年の十三夜は十月十五日だ(と、うちのカレンダーが言っている)。

 月にはその月齢による呼び名がある。
 旧暦一日の月が新月[しんげつ]。地球から見て太陽と月が同じ方向にあるので、月を見ることはできない。
 旧暦二日の月は、二日月[ふつかづき]。日が沈んだあとに浮かぶ糸のように見える細い月で、繊月[せんげつ]とも呼ばれるらしい。
 旧暦三日の月はいうまでもなく三日月[みかづき]。日没後の西の空にかかり、その細く輝く姿から「月の剣」とも呼ばれるとか。フランス語ではcroissant[クロワッサン]で、あのパンの名前の由来だ。
 旧暦七、八日頃の月は上弦の月[じょうげんのつき]と呼ばれる半月。美しい姿を弓に張った弦になぞらえ、弦月[げんげつ]や弓張月[ゆみはりづき]とも呼ばれる。
 旧暦十三日の月は先ほども紹介した十三夜月[じゅうさんやづき]。これから満ちる、ということで縁起が良い月なのだとか。
 旧暦十四日の月は小望月[こもちづき]。十五夜が望月だから、その一歩手前でちょっと小さいという意味か。
 旧暦十五日の月は十五夜の月[じゅうごやのつき]あるいは満月[まんげつ]。
実際は十五夜の月と満月は必ずしも一致しない。これは月が29.5日で新月から満月、そしてまた新月へと満ち欠けを繰り返しているからだ。
 旧暦十六日の月は十六夜月[いざよいづき]。「いざよう」とはためらうという意味。十五夜よりやや遅れて空に上がる。
 旧暦十七日の月は立待月[たちまちづき]。「今か今かと立って待つうちに月が出る」からこう呼ばれたらしい。
 旧暦十八日の月は居待月[いまちづき]。月が出るのを座って待つという意味の名前。
 旧暦十九日の月は寝待月[ねまちづき]。月の出が遅く、寝て待つほどという意味から寝待月と呼ばれるそうな。臥待月[ふしまちづき]ともいう、と。
 旧暦二十日の月は更待月[ふけまちづき]。夜更けまで待ってようやく出てくる月だかららしい。
 旧暦二十二、二十三日頃の月は下弦の月[かげんのつき]。これも半月だけど、上弦の月とは反対向き。真夜中に昇り昼頃に沈むため、青空の中に浮かんで見える。

 とまあ、いっぱいある。それだけ親しまれてきたということか。下弦の月からまたどんどん細くなって新月に戻るのだが、この細くなった先の見えない月を[つごもり]ということもあるらしい。

 話は変わって、月の模様。
 日本では「兎が餅をついている」と言われている。しかし中国では同じく兎なのだが、薬草を挽いていると言われているらしい。作っているのは不老不死の薬だとか。他にも国や地域によって違う模様に見えているようだ。
 IAXAの「うさぎ伝説の由来」というページに、その一部が載せられているので紹介しておこう。(リンク先がそのページ)
 他にも「月の模様」で検索すると、様々な模様が出てくる。
 地球上、どこでも同じ月面が見えているはずなのに、捉え方が違っているのは面白い。

 これからの季節は空気がどんどん澄んでいって、空を見上げるのにも向いている。月を見ながら物思いに耽るのも、また一興だろう。月見酒ならもっと好い。
 たとえ満月でなかったとしても、月は何か気持ちに寄り添ってくれるようなところがある。

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