資本主義ってどんなもの?
お金や経済の話 第三回
今回は資本主義について考えます。
といっても、私は専門家でもなんでもない
ので、だいぶざっくりしたした感じに
なると思います。
1.よく使われる言葉
「お金がお金を生む」というのは、
資本主義の説明でよく使われてそうな
言葉です。より具体的には、「安く買って
高く売る」や、「投資→回収→投資の
サイクル」などという言い方で、結果として
お金が元手より増えていることをあらわして
います。他には「大量生産による生産効率の
上昇」などでしょうか。
まずはこれらの言葉から、考えてみる
ことにします。
2.安く買って高く売る
「お金がお金を生む」は「投資→回収→
投資のサイクル」をわかりやすい言い方に
しただけみたいなものなので、後でまとめて
やることにし、ここでは「安く買って高く
売る」をやります。
当たり前のことを書きますが、安く買って
高く売るためには、まずは安く買えなければ
なりません。商品を生産して売るのなら、
原材料やそこに投入される労働力などの
エネルギーが商品よりも安くないと
いけない、ということです。原材料や
エネルギー資源や労働力を安く調達する
ためには、お高い商品を買ってくれる人達が
いるところではないところ、ということに
なります。自国民を購入者とするのなら、
原材料や労働力は自国より経済的に貧しい
他国に求めるのが望ましくなります。
早い話が源材料や労働力を買い叩ける
未開の土地や人を常に欲するのが、
このやり方の宿命です。いわゆる
「資本主義は常に外部を必要とする」
というやつで、帝国主義や植民地政策なども
これに含まれます。
3.大量生産による生産効率の上昇
これもよく言われてそうなので項目を
立てたのですが、分解してみるとほとんど
項目の組み合わせになってしまいそうです。
大量生産の条件は、同じ商品を売れる
大きな市場(帝国主義、植民地政策)と、
お金を集めて(投資)つくる大きな生産
設備と、安く買い叩ける材料及び労働力…
まるかぶりです。機械の導入などの
技術開発はありますが、それも根本には
エネルギーを安く買い叩いていることが
ありますし。
というわけで、もう次へ行きます。
4.投資→回収→投資のサイクル
これは2.をお金を出す投資家の側から
表現しているだけです……というと
言い過ぎになりますかね。今では商品生産
だけじゃなくて株式とか金融取引も……
というかむしろそっちが投資ですし。
でも、企業から見ると、株を誰かが買って
くれたお金で商売しているので、投資家に
その自覚はなくても、本質的には変わって
ないと言えます。
お金(資本)を集中させて運用する
システム、というのもここに含まれます。
まあ、もともと資本主義下では資本は
集中していくようにできているのですが。
だって、1億円持っている人が1億円
稼ぐのなら100%の利益率が必要ですが、
100億円もっている人なら1%でいいの
ですから。
ちょっと脱線しますが、今はAIに
すごい速さで取引させて利ザヤを稼ぐのが
投資というものらしいですが、これって
どこかおかしいと思いませんか?
お金の総量が増えていないなら、ただの
取引スピード競争でのお金の毟り合い
でしょうし、増えているなら、実体経済に
寄与しないで、お金だけが増えている、
つまりスタグフレーションってことに
なるしかないような気がするのですが、
どうなんでしょう?
5.利子がつく
これも4.と同じことの言い換えで、
お金を投資する(貸す)側は、将来増やして
(利子をつけて)返してもらう、借りる側は
将来利子をつけて返す、ということです。
なんでわざわざ項目を立てたかというと、
この利子というものについて、少し考えて
みたかったからです。
利子(この場合、一般的なプラスの金利で
考えます)は、将来回収できることと、
お金が増えることとが前提になっています。
ヒトの社会において、将来を意味するもの
として最初に挙がるのは、子孫でしょう。
ということは、お金の話の時のように利子の
究極形態を考えると、子孫にたどり着く
ような気がします。
6.まとめ
このように見ていくと、買い叩ける資源や
労働力が必要だったり、掻き集められる
お金や労働力の多さの勝負だったり、
結局のところは環境や人口に多くを依存
している中での競争、という感じがします。
そして、そのように考えると、日本の
高度経済成長とその後の停滞というのも、
意外と簡単に説明できてしまったりします。
オイルショック前の原油価格なんて、
今から見ると信じられないくらい安いです。
また、冷戦で中国や旧ソ連はこちらの市場に
参入していませんでしたし、インドや
東南アジア諸国はまだ不安定でした。
西欧諸国は国ごとの人口はあまり多くなく、
比較的早く戦後復興を開始して人口も
増えた日本は、当時アメリカに次ぐ人口
(=市場規模)だったのです。極端に言うと、
日本人1億人相手の1億人の市場規模がある
というだけで有利だったのです。
それが冷戦終結や後発国の復興でインドや
東南アジア諸国、ロシアや中国といった
人口の多いところが参入して有利が消滅し、
日本人1億人相手の商売のやり方しか
ノウハウがなかったりしたから停滞した、
ということです。
当時人気絶頂だったアイドルとかが、
「次は海外だ!」とかスポーツ新聞賑わせて
ほとんど成功しなかったのと、同じような
現象なんじゃないかな、という気がします。
7.結論
だいぶグダってしまいましたが、結論に
行きます。
「資本主義ってどんなもの?」
に対して、簡単に答えるとするのなら、
「お金にならないものを、
お金に変えようとするシステム」
といったところでしょうか。
ただし、それは、ヒトの世界の拡大や人口の
増加が前提になっていないと機能しないもの
ではないかと思われます。なぜなら、
世界の拡大より人口の増加率が上回れば、
一人当たりの資源や土地は少なくなる、
つまり資源や土地に対してヒトの価値
(値段)が下がるからです。また、
実体経済の規模の成長よりお金の増殖率が
上回ると、資源や土地に対してお金の価値
(値段)が下がって価格が高騰し、この時に
所得(ヒトの値段)が一緒に上がらないなら、
ヒトの価値(値段)もお金と一緒に下がって
しまうからでもあります。
お金の価値も上下するものなので、単純に
お金を基準とした価格だけで考えると、
よくわからなくなってしまうのが、
理解を難しくさせるところだと思います。
お金の価値、ヒトの価値、モノの価値、
それぞれのバランスが今どういうことに
なっているのか、と考えるのが現状を
把握したり、未来を考える上では重要な
ように思われます。
もしかしたら、お金というのは、
ある種のエネルギーのようなもの、
流通し始めた時から自然と少しずつ価値が
下がっていくようなもの、と捉えて、
商品とお金の価値の低下率の争いみたいに
考えられると、より実態に近づけるのかも
知れませんね。
8.(おまけ)資本主義では環境問題や
社会問題が解決しない理由
ここまで考えれば、自明のことです。
資本主義的な考えでは、安く買い叩けるなら
ヒトであっても買い叩くのですから、
社会問題は解決しません。
お金にならないものがお金になる方が
いいのだから、ヒトの吸える空気でさえも
商品化できる社会を志向するでしょう。
環境問題を解決するのには余分なコストが
かかる上に、解決しない方がお金になる
ものが増えるのですから、解決しようと
するはずがありません。
主な参考文献
『資本主義のパラドックス』 大澤真幸著
筑摩書房 2008
『浜矩子の「新しい経済学」』 浜矩子著
角川SSコミュニケ-ションズ 2010
『誰が「地球経済」を殺すのか』 浜矩子著
実業之日本社 2011
『超マクロ展望 世界経済の真実』
水野和夫, 萱野稔人著 集英社 2010
『終わりなき危機 君は
グローバリゼーションの真実を見たか』
水野和夫著 日本経済新聞出版社 2011
『世界経済の大潮流』 水野和夫著
太田出版 2012
『経済学の犯罪』 佐伯啓思著 講談社 2012
『資本主義という謎』
水野和夫, 大澤真幸著 NHK出版 2013
『経済学は人びとを幸福にできるか』
宇沢弘文著 東洋経済新報社 2013
『資本主義の終焉と歴史の危機』
水野和夫著 集英社 2014
『ホセ・ムヒカの生き方と言葉』
メディアソフト 2016
『人口論』 マルサス著 中央公論新社 2019
『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』
丸山俊一+NHK「欲望の資本主義」制作班著
東洋経済新報社 2020
『<世界史>の哲学. 近代篇. 1』
大澤真幸著 講談社 2021
『<世界史>の哲学. 近代篇. 2』
大澤真幸著 講談社 2021
映像作品
『欲望の経済史』
『欲望の資本主義 2019』
『欲望の資本主義 2020』
『欲望の資本主義 2021』
『欲望の資本主義 2022』
『欲望の資本主義 2023』
次回は歴史の方のシリーズで、
「言い方に配慮しない日本史 近世編」
をやろうと思います。
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