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今も心に残る懇談会〜先生が母親たちにしてくれた授業
子育てをしていると、本当に多くの方々との出会いがあるものです。
公園で出会う親子、学校の友達、その親御さん、先生.…。自分一人で行動していても出会えなかったであろう人達に、子どもを通してのご縁が繋がり、広がっていきます。
その中には、迷い涙する事もありますが、心からお手本としたい出会いや出来事もたくさんありました。
すべてがこうした方々のお陰で今日があり、自分も新米お母さんとして育てて頂いていました。
ここからのお話は今から25年ほど前の、長女が小学1年生の時のお話です。
ある日の学級懇談会
この頃娘の通う小学校では、授業参観の後に必ず学級懇談会がありました。
担任の先生から最近の学級の様子が伝えられたり、役員からの連絡事項が伝えられたり、多くの学校と同じような形で進められて閉会します。
しかしこの日は違いました。
そろそろ閉会になろうかという時に、「先生、ちょっといいですか?最近うちの子がクラスのある男の子にしつこく遊ぼうと言われて、違う友達と遊びたいから遊べないと断ると、身体を押してきたりするらしいんです。毎日なので、それで学校に行きたくない。と言っているんですね。他のお母さんも何人かそういう人がいるみたいなんですけど。」とケンタ君ママが発言しました。
サーッと教室の空気が変わりました。
ここで気になるのが「何人かのそういう人」のところ。何人も困っていますよ。というわけです。
そんなにたくさんの子が?と思っていますと、5名ほどのお母さんが手をあげて言いました。
「実はうちの子も先日しつこくされて、やめろ!って言ったらランドセルを引っ張られて後ろ向きに転ばされたんですね。」
「うちは、教室で消しゴム投げられて…」といった具合に、先生に伝えておられました。
現実に起きていることを、正しく伝えるのは悪いことではありません。けれども私は胸が痛くなりました。その話に出ているお子さんは、母子でいつも親しくさせて頂いているお家のシュン君だったからです。
シュン君ママはとても誠実な人でした。
いつも子どもをきちんと叱っていました。子どもにわかりやすい言葉で、悪いことは悪い。自分がされたらどんな気持ちかな?と、友達の気持ちに気づくことも教えていました。
ですから、最近の学校の様子を聞いてとても悩んでいました。諭してもわかってもらえてない息子の様子に、「どう言ったらシュンがわかるかな。」と悩んでいることを私に打ち明けていたのです。
7〜8歳の男の子を育てておられる方は、この年代の男児には良くあることとお分かりかと思いますが、第一子の初めての子育てと学校生活が始まったばかりです。まだ母としても予測不可能な出来事でありました。
少し懇談会がざわつき始めた時。シュン君ママが手を挙げました。
「先程からお話に出ているお子さんの話、実はうちのシュンの事です。大変申し訳ありません。母として注意をしておりますが、自分の気持ちの方が先に出てしまうようで、遊びたい時に断られたりするとまだ口よりも先に行動に出てしまうようなのです。
手が先に出てしまい嫌な気持ちにさせてしまったお友達には、この場を借りて謝りたいと思っています。」
言葉の最後の方は、涙を流されていました。
この状況で涙が出ない母親がいますでしょうか。
しかし、そこに追い討ちをかけるように質問は続きました。
「シュン君のお家では、友達に乱暴なことをした時、どのように声をかけて教えているのですか?」
「普段おうちでも同じような事がありますか?」
私ならもうこの場を逃げ出していますが、シュン君ママは誠実にそれらの質問に対応しようとしていました。
何回かの質疑応答があり、学級懇談会が裁判みたいな雰囲気になりつつあったその時、今まで静かに話を聞いておられた担任の先生が立ち上がって言いました。
「少しの時間、私がお話してもよろしいでしょうか」
先生が教えてくれたこと
先生は黒板にチョークで8角形を書きました。
「これは人の心です。
人には色々な面があります。
この一辺、これを優しさとしますね。
で、次の一辺、これを頑張る気持ちとします。
それからこの一辺、これを悔しい気持ちとします。
このように人には色々な面があるものです。
8角形では足りないかもしれない。
16角形かも知れません。
その一辺が非常に崩れてしまう時、果たしてこの人の全てが崩れているでしょうか。
この一辺だけを捉えて、この人がこんな人だ。と決めつけてしまう事は、人として、してはならない事だと私は思います。
学校は勉強する場所です。
けれども教科を学ぶだけではありません。
自分が嫌な事をされた時、どのように相手と話をするのか、それとも仕返しをするのか、こういう日常から学びがあると私は思うのです。
どうか、シュン君のお母さん、今まで諭してこられた様にこれからもシュン君に人の気持ちを想像してみることをお話ししてあげてください。
ケンタ君のお母さんや、率直にお話して下さったお母さん、是非この時に人としてとるべき道をお子さんに教えてあげてください。嫌な事をされた時、どうしてなの?と気持ちを聴いてみると、案外わかり合えたりするものですよ。
教室は間違えて良い場所です。
これからも間違えながら学んで行く子供達を、お母さん方と一緒に応援していきたいと思っています。どうかご協力お願いできますでしょうか。」
誰からともなく、拍手が沸きました。
我が子を想う母の気持ちはみんな同じです。
何だかすごく教室の空気が温かいものに変わっていました。
私は今でも、この先生の教えを聴かせていただけた事に、本当に感謝しています。そして、新米ママの私が、決して忘れまい。と心から感じた先生の授業でありました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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