幻影・不在・俺は本を読むのが遅い 〜村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』42〜
佳境です。
キキは何者だったのか?
それが「僕」の夢の中で、キキの口から語られる章である。
もちろん、夢の中のキキは、「僕」が作り上げた幻影なのかもしれない。実際、キキはそのように言う。
リアルなキキは居なかったのか?あの2ヶ月ほど暮らした女は一体誰だったのか?
五反田君が殺してしまったのはキキなのか?五反田君が、そう思っていただけなのか?
そうした様々な謎は解けないまま残る。
キキによれば、五反田君は、そうすることで自分自身のトリガーを引けたのだという。
謎めいた言葉。
キキは何者なのか。
五反田君にとってキキは自身の隠れた衝動を表に現すトリガーなのだとしたら、「僕」にとっての隠れた衝動とは何か。
キキは「僕」の前に常に現れては消える。道の向こうへ、扉の中へ、追いかけて、追いついたと思ったら、そこにいない対象である。欠如と不在。
何かがあると思い込んでいる不在。「不在」という幻影だけがある不在。何もない不在。
*
夢の中にキキが出てきて、「僕」にいろいろなことを語った。
*
オーケー、わかった。
俺は本を読むのが遅い。
早いつもりでいたけど、『ダンス・ダンス・ダンス』にこんなにかかってたんじゃ、ソローキンの『ロマン』はおぼつかない。
長いものを読む体力がない。
オーケー、その通り。
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