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チャールズ・ディケンズ『オリヴァー・ツイスト』4

昨夜は、バリウム疲れか、寝るのが早かったです。

緊張してトップで並び、サクッと出来たことで多少、緊張もなく出来たような気がします。それにしても、あの機械の「ちょっと左に傾いて〜、そっちは右!逆!」みたいなやりとりはなんとかならないもんですかね。

下剤も速攻飲んで、あとはwaveを待つだけだぞー、と思ったら、小学校から電話で「吐いたので迎えにこれますか?」と。ええ…wave…と慌てて帰ったら、案の定電車の中でbig waveの到来。なんとか耐えて、駅前の百貨店で、two wavesをやり過ごす。すみません、尾籠な話で。

second waveを待つ間、百貨店内の本屋で物色。先日、写真家のジャック・ルイ・マンデ・ダゲールの事績を読んでいて、豆知識的に出てきたバルザックの『絶対の探求』。『ウジェニー・グランデ』『ゴリオ爺さん』『谷間の百合』で、もういいかなってなったわけですが、やっとここで読む気になれた!次は、『絶対の探求』ですな。

その前にディケンズ読み終わらないと、と思って、随分間が開いちゃったことを後悔。でも古いエントリを読み返して、理解。実は9月の最中に映画は観たんだよと、述懐。くだらないことを言ってないで、先に進みます。

あらすじ(5~7)


オリヴァーは葬儀屋で働き始めた。

葬儀屋は陰鬱で、オリヴァーの心は重かった。そこに、横柄な先輩の丁稚であるノア・クレイポールが入って来る。ノアは、オリヴァーに罵詈雑言を述べ、先輩風をふかせる。

ノアは「女中」の先輩であるシャーロットと一緒になって、オリヴァーをいじめる。ノアはノアで、街に出れば「慈善学校」と呼ばれて、馬鹿にされていた。ノアにとって馬鹿にできる対象が現れたとたんに、馬鹿にし始めたのだ。

葬儀屋の主人のサワベリー氏は、妻に頭が上がらなかった。子どもの葬儀にオリヴァーを連れていくことで、商売が繁盛しそうだという計画を言い出せずにいる。勝手にやってしまうと、妻がブチ切れるからだ。

何とかオリヴァーを葬儀に連れていくことを納得させたサワベリー氏は、教区吏のバンブル氏に、葬儀の依頼を受ける。バンブル氏は、その家が、治療のために与えた薬を飲ませず、はしかで子どもを死なせてしまったと、ぶつぶつ不平を言っていた。

オリヴァーと一緒に、サワベリー氏は、その家に行く。すると、布団をかぶせられた子どもの遺体があり、主人は泣いている。その母であろう老婆も悲しんでいる。

何とか説得し、葬儀に向かう。それをオリヴァーは見ている。サワベリー氏、バンブル氏、牧師、オリヴァーはともに、葬儀を遂行する。そうして、オリヴァーは、一通り葬儀のプロセスを観察した。

オリヴァーが付きそう葬儀は、盛況だった。サワベリー氏の発想は、かなりの成功を収めた。オリヴァーは、はしかが流行し、多くの子どもが亡くなったこの時代の寵児として、人々に印象付けられた。身なりも、それなりに整えられていった。

オリヴァーは、一流の葬儀屋に欠かせない落ち着いた所作と精神の完全な制御法を身につけるために、大人の葬儀にも毎回のように同行し、強い心を持つ人々が、与えられた試練と喪失を立派に受け止め、不屈の態度を示すところを数多く目にした。
p.70


しかし、オリヴァーは一方で、人間の性も目にする。葬儀であれほど悼み悲しんでいた人々が、家に帰ると気持ちを容易に切り替える術も目にした。「これらすべては見ていて愉快で、勉強にもなった。オリヴァーは大いに感心しつつ観察していた」(p.71)。

いじめは相変わらず続いていた。ノア・クレイポールは、嫉妬ゆえにオリヴァーにつらくあたった。シャーロットも、ノアに同調した。サワベリー夫人も、夫がオリヴァーを大切にすることで、むかついていた。

さて、ここからオリヴァーの経歴にとって非常な重要な一節となる。一見些末に思えるかもしれないが、彼のその後の進路や行動のすべてに、遠まわしに大きな影響を与えた事件を記さなければならない。
p.72

ノアは、年下のオリヴァーをからかって楽しんでいた。その際、生まれに言及する。オリヴァーの母親の話を持ち出したのだ。ノアはオリヴァーを泣かそうと思って、そこをついてきた。母親をけなし始めた。

オリヴァーはとうとうキレた。

オリヴァーは怒りで顔を真っ赤にして急に立ち上がり、椅子も机もひっくり返してノアの喉につかみかかると、相手の歯がガチガチ鳴るまで激しく頭を揺さぶった。あらんかぎりの怒りの力をこめた重い一撃を食らわして、ノアを床に打ち倒した。
ほんの一分前まで、ひどい仕打ちにしょげ返った静かで内気な少年だったのに、その精神がついに目覚めたのだった。亡き母親に対するひどい侮辱が彼の血をたぎらせた。
p.74

ノアは、殺されると叫んで、助けを乞う。シャーロットがオリヴァーを引きはがそうとするも、なかなか倒れない。サワベリー夫人も来て、三人でオリヴァーを捕まえ、石炭庫に押し込んだ。そして、教区吏のバンブル氏を呼んだ。


ノアはバンブル氏のもとへ行くと、オリヴァーが乱心したことを訴えた。演技で、自分がさも手ひどくやられたことも、強調しておいた。バンブル氏は怒りに震え、しかし威厳を持ってオリヴァーに当たらなければならないと判断し、急行した。

オリヴァーと相対したバンブル氏だが、以前と異なるオリヴァーの剣幕にいささか動揺を隠せない。バンブル氏は困った揚げ句に、食事を肉から粥に変更することを提案する。

サワベリー氏が戻り、オリヴァーの言い分も聞こうとした。しかし、サワベリー夫人がノアの同調者で、知りもしないのに、ノアの弁護を買って出たあげく、オリヴァーに否定され、泣き出す。夫人に泣かれたサワベリー氏はどうしようもなく、オリヴァーを折檻することに決める。

彼は嘲罵を浴びせられても、軽蔑の表情で聞いた。鞭打ちも声すらあげずに耐え抜いた。生きながら火あぶりにされても最後まで悲鳴をあげさせないような誇りが、心のなかに湧き起こっていたからだ。しかし、誰からも見られたり聞かれたりしなくなったこのとき、オリヴァーは床に膝を落とし、両手に顔を埋めて泣いた。それは人間の名誉のためにも、これほどいたいけな子供が神のまえで流さずにすむようにしたいと思わせる涙だった。
p.85

オリヴァーを閉じ込めていた部屋の閂があいていた。オリヴァーは外に出た。そして歩き続けた。歩き続けて、ある家の前に出た。そこで、オリヴァーは、かつての仲間と出会った。ディックというその子は、花壇の草むしりをしていた。

オリヴァーが話しかけると、ディックは喜んだ。しかし、顔色は悪かった。

「ぼくを見たって言わないで、ディック」オリヴァーは言った。「逃げるところなんだ。叩かれたり、ひどいことをされたから、ディック。ずっと遠いところで幸運を探すよ、どこかはわからないけど。きみはなんて顔色が悪いんだ!」
「もうすぐ死ぬんだって。お医者さんがそう言うのを聞いた」子供はかすかに笑みを浮かべて答えた。「きみに会えてとってもうれしいよ。でも、立ち止まらないで。立ち止まっちゃいけない。」
「ああ、わかってる。きみにお別れを言いにきたんだ。また会おう、ディック。きっと会えるよ。きみは元気になって、幸せになる」
「だといいね」子供は答えた。「でも幸せになるのは死んだあとさ、まえじゃなくて。お医者さんが正しいのはわかってるんだ。オリヴァー。天国とか天使の夢ばかり見るから。起きてるときに見たこともないやさしい顔とかね。ぼくにキスして」子供は低い門をよじのぼり、か細い腕をオリヴァーの首にまわした。「さよなら、きみ!神様の祝福を!」
小さな子供の唇による祝福だったが、オリヴァーがそんな祈りを捧げられたのは生まれて初めてだった。その後の人生のあらゆる苦労と受難、うんざりするほどの長い年月で経験したあらゆる厄介事と変化のなかで、オリヴァーがそれを忘れたことは、ただの一度もなかった。
pp.87-88

感想

19世紀的な小説だ。苦難に耐え、立身出世をはかる。スマイルズの『西国立志編』の翻訳以来、そうした主題は、日本の近代小説の一つの軸を形成する。

だから、ではないが、私の母も、そういった物語を私に与えた。ハウス食品がスポンサーとなった世界名作アニメも、そういった主題を私に影響を及ぼした。勧善懲悪と立身出世。この主題は、マンガを通じても、私の精神に影響を及ぼしただろう。

いじめられているオリヴァーが、力で抵抗し、拘束を打ち破って外に出るところ。連載の最後にもってくるには、なんとも感動的なシーンである。大英帝国によって植民地の搾取を行いながら、一方で慈善活動にも熱心だったこの国の読者は、こうしたシーンに涙したのかどうか。

いじめっ子が、反抗された途端に急に被害者ヅラして、しょぼくれるなんてことは日常茶飯事で、教室のなかだと、一対一ではなく集団対一になりがちなので、私はクラス制のようなものに全く反対なのだが、流動性を高めるとやれ友達ができないとか居場所ができないとか、かまびすしい。いじめっ子が、多数的な勢力を形成する前に、サクサクと壊してしまえなんて思うし、いじめっ子の内面的問題に踏み込んで、分析した方がいい。加害者もまた問題を抱えているので、加害に及ぼうとするのだろうから。このノアのように。いじめるのが好きでいじめる子どもは、これは人格障害で、治療が必要だ。

スカッとするシーンではあるが、こうした怒りの後に起こる、孤立無援の状態を恐れて、自らの尊厳を自ら踏みにじってしまうことは多かろう。この尊厳の自覚をいかに主体的に行っていくのか、ということは、保護者の立場からみても、重要だと思うが、いかんせん、それらを語る言葉を持たない。なるようにしかならない、という感じ。

久しぶりに書いたら、なんだか、真面目になっちゃった。つまらないね。



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