見出し画像

「小説 雨と水玉(仮題)(36)」/美智子さんの近代 ”KJ大学高坂教授”

(36)KJ大学高坂教授

「久しぶりね、田中さん」
「はい、ご無沙汰しております。今日はお時間を頂きありがとうございます。」
「いや、私もあなたに会うの楽しみなのよ。どうなの、最近は?」
「ありがとうございまあのあの、お仕事は忙しくさせてもらってて、やりがいを感じながら頑張ってるつもりです。」
「でもあなたがわざわざ連絡してきて来るっていうことは何かあるんでしょう?
結婚がらみかしら?」
「あのお、先生、正直に申し上げますが、そうなんです。」
「やっぱりね、おめでとう。
でも話を聞いてからかしらね。」
「はい、あのもういろいろ言いまわすこともできないんで、簡単に言いますと、相手が東京の人でして仕事を続けたいんですけど東京で働くためにどう考えたらいいかと」
「そうなの、東京の人かあ。ご家族のことはかまへんの?仕事のことだけでいいのかしら?」
「ええ、家族のことはなんとかできるって思ってます。相手の人とも分かり合えてて。ですので仕事だけが、、、」
「そう、A書店の先輩とか上司とかには相談してみたの?あっまだかな、私ところが最初?」
「はい、すみません、先生のところにいきなり来てしまって」
「そんなことないわよ、最初で嬉しいわよ。
で、A書店の仕事は続けたいの?それとも何かほかにしたい仕事はあるの?」
「はい、可能ならばA書店の仕事を続けたいと思ってます。ただ、自己都合でそういうことができるのかということは難しいかなと。もちろん会社に相談してみてからではあるんですけど」
「たしかにそうね、でも信頼できる先輩とかに話してみて情報を集めることね、まずは。状況次第だけれど場合によっては私も推薦状を書いているから協力してあげてもいいわよ。ただ、可能性がどのくらいあるかが重要ね、そこは私も良くわからないところがある、A書店については。
だからよく調べてみて私で役に立ちそうだったらまた来ればいいわ。
それとあなた東京で職を改めて探すっていうことは考えてるの?」
「はい、それも考えたいんですけど。そんなにまだ経験があるのでもありませんし、どんな風に考えたらよいか、正直まだ」
「東京はね、関西より職はたくさんある。ただ田中さんに合うところでないとね。あなたは私から見ていい個性も能力も持ってると思うけど、人を押しのけてまでっていうタイプではないんじゃないかと思うの。
だから今結婚を真剣に考えていることはすごくいいことだと思う。
家庭を作ってしっかりと支えていくっていうことは私は女性として素晴らしいことと思います。もちろんわたしは仕事を辞めて家庭に入れと言ってるんじゃくて、田中さんがそれだけでなく仕事を続けようって真面目に考えているのもすごくいいことだと思う。
結論的に言うとね、あなたが勉強を続けるつもりなら、私の方で東京の伝手を探してみることも出来るわよ、それは。
ただどうかしら、まずはA書店で東京に転勤できるか、良く調べてからの方がいいんじゃないかしら?」
「はい、先生にそんなに言っていただいて嬉しいです、ありがとうごさいます。先生おっしゃるようにまずA書店の先輩と話してみたりして情報を集めます。それで難しいようなら済みませんけどまたご相談させてください。」
「いいわよ、まあそうね、A書店で東京転勤の方法を考えるのが今は一番ね。そうしてみることね。
あっ、そういえば相手の人はどういう人なの、それを聞かせてもらわなくちゃ」
「はい、あの学生時代からやってたH大のサークルで知り合って最近お付き合いを始めた人なんです。」
「そう、どういう仕事してるの?何歳くらいなの?」
「H大の理学部の大学院を卒業して私より四つ上でいまはCっていう会社の研究所に勤めてるんですけど」
「そう、理系の人ね、あなたのやりたいことに理解はあるの?」
「ええ、理系らしく真面目ですけどちょっと変わってて不器用な感じがありますが、よく話を聞いてくれます。
あっ、言うの忘れてましたけど、K大学のT先生と仕事でときどきお話しさせてもらってて、先生にもよろしゅうって言われてました。
あと、T先生から言われたことが有って、ちょっと変わってて不器用でもいいから誠実な男の人と付き合いなさいってアドバイスしてくれたんです。けど私の相手、本当にそんな感じの人なんです。」
「そうなの、T先生とあなた仲良くしてるのね、それは頑張ってるわね。大したもんよ。T先生はめったな人にそんなこという先生ではありませんからね。
そうなの、それはA書店での転勤という可能性を考える価値あるんじゃないかしら。是非そうしてみたらいいと思う。
でも、面白いわ、T先生があなたとフィアンセを引き合わせたのかもしれないわね。不器用だけど誠実な変わった人ね。うん、わかるわ、私もあなたにはそういう人がぴったりと思う。」

それで話が盛り上がり、東京での仕事の可能性についても気にかけておいてくれるということまで言ってもらった。
その後、美智子は高坂先生とよもやま話をして一時間ほどで退室して、帰路についた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?