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「先輩の再雇用満了退職に思う」/極めて有能な人だけに制度の制約が恨めしい、しかしただ功績や思いは残っていく。

この11月である先輩が65歳再雇用満了で退職します。
この方は、現役間、会社の基幹事業の主力機の基幹機能部材において、革新的技術を導入、製品化を主導した人でした。

若い頃米国に留学し、その領域の先端にあった方で30年その技術を主導してきました。そして革新的技術を開発し、製品への導入を成し遂げ、以後20年その技術は使われ続け、見通し得る限り今後も使われ続けると思われます。

私は、8年前から一緒に仕事をさせていただきましたが、いつも人の2歩、3歩先を考え、皆に周知、先導するというまさに技術の目利き力のすごい力を持った人でした。
会社に入って20年を超えていましたが、これほどの人を見たのは初めてでした。

5年前に部長職で定年を迎え、その後は再雇用として、一線に戻り、地道な実験を実施し技術開発を継続されていました。

人柄も極め付きの紳士で、私のように何かあれば狼狽え、気が立つ興奮性の人間とは180度違う方です。

現役時代、有意の技術者からはいつも尊敬のまなざしを受けており、しかし、権力志向でないため、部長職より上には出世せず、最後まで技術そのものへの透徹した視線を持ち続けていました。
本当は、こういう人に技術部門の役員になっていただきたいのですが、実態は中身より遊弋のうまい人間が出世するのがサラリーマン社会というものです。

再雇用になってからも、5年の間に、数々のクリエイティブな結果を出し続けていました。主力世代の皆がこの人と一緒に仕事をしたがったことでその魅力がわかろうというものです。

こういう先輩がついに、今月で再雇用満了となり、会社を去ることになります。
制度は特別扱いを許しませんので、本当は組織にはこういう方こそ、特別に残っていただきたいのですが、残念ながら退職ということです。

しかし、私はいつも思うのですが、この方ほどの能力は発揮し得なかったかもしれないけれど、現場で実直に技術や製品のために献身した多くの方々がこうやって制度の中で会社を去っていったのだろうということです。

会社という組織は、そのような方々の努力、尽力により成り立ってきたし、これからも成り立っていくのだと思います。

綺麗なこと言うな、という批判は甘んじて受けますが、私はそう固く信じています。
昨今哀しいのは、最上位にいるヒトばかりに脚光があたり、地道に現場を支えている人たちが報われにくい企業社会になっていることです。
そうでなく現場で情熱を燃やし、身を粉にして働く人たちがより多く報われる社会であってほしいと思います。

時代はかわり続けます、しかし、そこで生きる人間には不易なものがあるはずです。そういうものを大事にして変わり続ける社会に挑戦していく、そういう大事なことを皆がいつも思いながら仕事をしていけたらと思います。



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