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「BSテレ東 『男はつらいよ』第四十六作『寅次郎の縁談』」/松坂慶子二度目のマドンナ、美しさにやられる寅と観客、もしかしたら名優島田正吾も

「寅次郎の縁談」

このころになると、ストーリの基本に満男の恋愛が流れる形で作品が展開されてきます。
この第四十六作も、就活に敗れた満男が家出しひとり旅に出て行方不明になるところから物語が始まり、満男を取り戻すために寅次郎が出張っていくところから満男と寅の恋が同時進行的に進んでいきます。

マドンナ松坂慶子

今回のマドンナは、二度目の登場となる松坂慶子です。
一度目は、第二十七作「浪花の恋の寅次郎」(昭和56年/1981年 夏)に出演していますが、この作品も小欄で記事にしていますので詳細はそちらをご覧ください。

それにしても第二十七作から十二年ぶり二度目のマドンナですが、松坂慶子は相変わらず美しい。美しい松坂慶子に、寅も観客もやられっぱなし、という感じです。
そして、その役もやはり不幸のさす役どころでワキの俳優陣がそれを見事に支え、彼女の演技を際立たせています。

島田正吾と松坂慶子が作る名場面

最もハイライトと言えるのは、名優島田正吾が父親として借金を抱えている娘松坂慶子に残った遺産を譲ろうとし、その愛情に松坂慶子が泣き崩れる場面です。

ところで、この作品にはまさにキープレイヤーとして、老名優島田正吾が登場します。
こう行った老名優が登場する寅さんシリーズの作品には、第九作、十三作の宮口精二、第十七作の宇野重吉、第十九作の嵐寛壽郎、第二十九作の片岡仁左衛門、第三十八作の三船敏郎が思い浮かびますが、いずれもその作品を際立たせるキープレイヤー、キー脇役を演じてくれていて、その作品への思いが胸に長く残ります。
そういう意味でこの作品中の名優島田正吾も素晴らしい演技により作品を彩ってくれています。

名場面に戻りますが、
松坂慶子が泣き崩れる名場面のその前の島の宴会の場面に、父島田正吾が娘松坂慶子とタンゴのダンスをいっしょにおどる場面が効果的に挿入されています。これなど、島田正吾の演技は、90歳に近い名優の男の色気を存分に感じさせてくれるもので、私の想像では、島田正吾は美しい松坂慶子と踊ることを心底喜んで演じたのだと思います。それが色気となってこの場面を名場面にしていると思いますし、ハイライトである松坂慶子を泣かせる場面に抜群の効果で繋いでいると思います。

そしてこの名場面には寅が絶妙に絡んできて紡がれた物語を演出しています。

そしてもう一つの名場面

そしてもう一つの名場面が、松坂慶子と満男の「寅」に関する夜の語らいの場面です。
寅と松坂慶子がお互いに好意を寄せあうという「寅さん」で設定されるこの上ない条件です。
そのことを松坂慶子が満男に問いかける、満男は半ば寅おじさんの失恋の繰り返しを揶揄して語り、それでも松坂慶子に寅おじさんを薦める発言に、松坂慶子が毅然と満男を非難、𠮟りつける場面、、、、、、
この場面、やはりたまりません、、、、

松坂慶子は名女優

ここまで魅せてくれた松坂慶子はやはり名女優です。
いまなお、そのキャラクターはこの世界で健在、観るたびに素晴らしい、と思わせられます。



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