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「小説 雨と水玉(仮題)(23)」/美智子さんの近代 ”週末土曜日の夜の電話”

(23)週末土曜日の夜の電話

水曜日の昼に梅田の郵便局に速達で出したので、啓一の住む東京には金曜日には着くはずだった。
金曜の夜、たか子が耳元で、
「お姉ちゃん、まだ電話、来ないねえ、今日届いて読んでるはずやのに。」
「そんなすぐには。」
「そうやね、残業してはるかもしれへんしね。
土曜か日曜には来るやろね。楽しみやな、お姉ちゃん」
「あんまり言わんといて、緊張してくるやないの。」
「まあ、落ち着いて待っといたら、明日あたり吉報が来るでしょ」

土曜日のちょうど九時ごろ、今のように携帯電話やスマホなどなく各戸に固定電話しかなかった時代なので、
「お姉ちゃん、電話よ」
「はい、すぐ行く」
たか子がにこっとして受話器を手渡した。
「はい、美智子です。
こんばんは、はい大丈夫です。
はい、はい、ええ、
いえ、こちらこそありがとうございます。
ええ、はい、はい、いいです。
来週ですか?大丈夫です。土曜日、はい、
あ、来ていただけるんですか?ありがとうございます。
そうですね、公園とかでもいいですね、
はい、はい、
あ、服部緑地はちょっと身近過ぎて、ええ、
万博公園とか、大阪城公園とか、
ええ、わたしもゆっくりできるお店とかあんまり、ええ、
はい、公園がいいです。
ふ、ふ、ふ(笑)、豊島公園はちょっと近所過ぎます、ふ、ふ、ふ(笑)
はい、いいお店が見つからない場合は万博公園で、はい、いいです。
確か千里中央からバスで行くんだと思います。
そうですね、はい、バス亭は場所がわかりにくいですね。
そうですね、わかりました、そうしましょう。
午後一時に改札で待ち合わせ、はい、はい、大丈夫です。
はい、ふ、ふ、ふ(笑)、待ってます、必ず、
はい、ゆっくりお話しを、はい、はいわたしも是非、はい、
ええ、はい、はい、
ありがとうごさいます、楽しみにしています、
はい、ええ、土曜日午後一時に、
はい、それではおやすみなさい。」

良かった、前とは違ってスムーズに話ができた。美智子は安心した。
「お姉ちゃん、来週土曜、万博公園やなデート?午後一時に待ち合わせやね、
よかったね。」
「うん、ありがとう。」

翌週水曜日に、もう一度啓一から電話があった。
万博公園でいいか、という確認だった。
二年半前とは違い、念を入れてくれているようだった。
美智子も気になっていた間違いやすい待ち合わせ場所を千里中央でなく、分かり易い、啓一の着く新大阪の新幹線地下鉄方面改札口に十二時半ということにしてもらった。

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