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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
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2023年10月の記事一覧

「ローマ人の物語ⅩⅣ キリストの勝利」/四世紀から終末の五世紀へ、陰湿な権力者コンスタンティウス帝、一服の清涼剤かのようなユリアヌス帝そしてテオドシウス帝と司教アンブロシウス

キリスト教と皇帝の利権構造化 キリスト教を公認したコンスタンティヌス帝時代のミラノ勅令は、実質的にキリスト教国教化のスタートだった。 利用したのは、コンスタンティヌス帝であったが、帝国の衰亡が辺境の蛮族侵入から帝国内への侵犯へと進み民衆の不安が否が応でも昂進する中で、コンスタンティヌス帝の息子、コンスタンティウス帝が権力を掌握していく中で皇帝とキリスト教の間で利権構造化が進んでいきます。 皇宮に蔓延る宦官という名の専制政治官僚 ついに、ローマ帝国内に、あの忌まわしい宦官

「『最後の参謀総長 梅津美治郎』祥伝社新書 岩井秀一郎著」/もっと語られるべき人梅津美治郎

梅津美治郎 最近、今村均大将本を刊行した岩井秀一郎の梅津美治郎伝を読みました。 少し前に、『今村均 敗戦日本の不敗の将軍』については書評に掲載しましたが、 今村さんと深いかかわりのある、梅津美治郎については、帝国陸軍の最後の参謀総長(統帥のトップ)であるにもかかわらずこれまで評伝が驚くほど少なく、私なども寡聞にして成書を読んだことが有りませんでした。 梅津さんは、今村さんの5年年上(明治15年生まれ)、陸士では4期上(陸士15期)にあたり、今村さんが陸大入学の年に陸大入

「中村天風著『成功の実現』ふたたび」大谷翔平君お前もか、、、

Forbesが中村天風を記事にしました。 Forbesが大谷翔平君まで持ち出して中村天風を記事にしました。 これは若い人たちにも関心を持ってもらえる可能性が有り、中村天風の一読者としても非常に嬉しいことです。 Forbes記事はなかなかよく纏まっています。中村天風の略歴、日本の近代を形作った政治家、軍人、企業家が影響を受けたことを述べ、最近では、あの大谷翔平君も読んで勉強したらしい。 影響を受けた明治大正昭和の偉人としては、東郷平八郎、松下幸之助、稲盛和夫、永守重信な

「ローマ人の物語ⅩⅢ 最後の努力」/四世紀、権力意志の塊である二人の皇帝による専制国家化=それはもうローマではない。キリスト教は皇帝の権力基盤強化のために利用された。

衰亡を加速するローマ帝国 ローマの衰亡は留まるところを知らなくなっていきます。しかし、ローマ帝国を維持することが目的となっていき、維持するための体制が、権力志向の塊である二人の皇帝によって以後、ローマ帝国は専制国家となってしまいます。 ディオクレティアヌス ローマ帝国の辺境を守るために、内乱を最小限にとどめ、政権の安定を優先するために、皇帝に権力を集中させ、辺境を効率よく守る、このことを進めたのは、権力志向の権化であった、ディオクレティアヌス帝でした。 権力の集中を得

「『今村均 敗戦日本の不敗の司令官』PHP新書 岩井秀一郎著」今村さんの生涯を正確に読みやすく纏めてくれています。今村さん導入本としてお薦め

『今村均 敗戦日本の不敗の司令官』PHP新書 岩井秀一郎著 は今村さんんの評伝として優れています 本ブログにマガジン設定している「今村均陸軍大将」に関する評伝の近刊について読んだので紹介します。 最近、今(令和五)年の7月にPHPから出版された、『今村均 敗戦日本の不敗の司令官』PHP新書 岩井秀一郎著 について紹介します。 一気に読みましたが、著者の岩井さんは昭和戦前の陸軍関係の著作を多くものにしており、今村さんが昭和に入り陸軍中央で課長クラスで履歴を進めるあたりから