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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
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2023年6月の記事一覧

「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」/ローマは最も仕合せな世紀を迎えた、トライアヌス・ハドリアヌス・アントニウスピウス三賢帝

賢帝ネルヴァからトライアヌス、そしてハドリアヌス、アントニウスピウスへ この三賢帝の歴史は、最もローマが繫栄して平和であったローマ人にとって最上の世紀ということです。 それは取りも直さず、三賢帝の賢明な統治にあったことは確かなことです。 それを塩野七生さんが綿々とつづってくれた巻がこの第Ⅸ巻ということになります。 この繁栄は、それまでのカエサル、アウグストウス、ティベリウスやヴェスパシアヌスなどの皇帝が巧みに築いてきたローマ帝国の数々の仕組みや仕掛けが完成へ向かう過程であ

「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」(塩野七生著、新潮社)/ユリウス・クラウディウス朝の後の混乱とその収拾 ヴェスパシアヌスから賢帝の時代へ

ユリウス・クラウディウス朝から脱皮とともに訪れた危機 帝政を実質導入したカエサル、それを見事に受け継ぎ帝政によるパックスロマーナを実現したアウグストウス、その義子のティベリウス、さらにカエサル、アウグストウスの血をひく者たちによる帝政の継続、、、、その末代のネロによる混乱、そのあとに訪れた更なる混乱から危機が迫る、第八巻はこんな状況から始まります。 状況の見えていない短期三代の皇帝 ガルバ、オトー、ヴィテリウスと短期三代の皇帝は、ローマ帝国のおかれた状況、皇帝の求められ