マガジンのカバー画像

書評

91
読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
運営しているクリエイター

2023年3月の記事一覧

「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前」野心、虚栄心の問題

いま、「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ルビコン以前」をまさに読んでいるのですが、カエサルの人柄が少しづつ胸の奥に伝わって来てその世界に心が勇躍してきつつあるところです。 中盤に差し掛かって、之は左成り!と手を打ったところがありますので少し記しておきたいと思います。 野心と虚栄心 塩野七生さんは、カエサルを評するにあたり、スッラ、ポンペイウス、キケロ、ブルータスらと比較して、野心と虚栄心が共に大きく野心のそれが一段と大きいのがカエサルだと言っています。 一方、ス

「デフレ低金利からインフレ高金利へ時代転換 『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小』(日本経済新聞出版)チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン」

下記の先行記事中に、 『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小』(日本経済新聞出版)チャールズ・グッドハート&マノジ・プラダン について、読後記事にすると記しました。 かなり重厚な内容でしたので読むのにしばし時間を要しましたが、これまで昨年から本コラムで繰り返し述べてきたデフレからインフレへのパラダイム転換について、理論的背景がはっきりと浮かび上がってきた思いです。 日本の低落と世界の労働年齢人口 この本の中では、日本の失われた30年について、明確に記述して

「トッド人類史入門 西洋の没落」エマニュエルトッド、片山杜秀、佐藤優(文春新書)

エマニュエルトッドの新刊新書のご紹介です。 全五章の構成です。 前半の一~三章は、既刊「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」(文藝春秋)の解説的なものです。 慶應の片山氏、佐藤優氏も第二章の対談、解説章の第三章においても抑制的で好感が持てました。 改めて、この浩瀚な「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」の要点を再認識することができ有益でした。 そして、第四章は、トッド氏の昨秋(2022年秋)の水戸でのインタビューで、トッドの日本観が楽しく読めます。 しかし圧

「3/7パウエルFRB議長議会証言『利上げペース加速も』タカ派色満載」/だから言ったでしょう、、、インフレは昂進していきます 

3/7パウエル議長のタカ派満載議会証言 今日3/8(水)のニュースは、やはりパウエルFRB議長の議会証言でしょう。 このインフレが止まない情勢下、やはりパウエル議長はタカ派色を満載した証言をしてきました。 「利上げペース加速も」有り得ると、3/21、22のFOMCでは0.50%の利上げもあるとの発言です。 3月FOMCは0.50%の可能性  当然、1月の経済統計の結果を見れば有りうる線だということは本コラムでもたびたび申し上げてきました。 なにしろ、このインフレはな

『宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介を語る』(文芸春秋社)安倍洋子

『安倍晋三回顧録』を読んだこともあり、近刊されたこの『宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介』も安倍晋三のの母であり、安倍晋太郎夫人そして岸信介の娘である安倍洋子からみた政治家三代という意味で一度読んでおく必要もあろうと思い、読んでみました。 昨年7月参院選の真っただ中で、ああいう形で元総理である息子を失った母の気持ちというものを思えば、痛切を越えて余りあるものがあります。 この本は、平成28(2016)年に文藝春秋に掲載されたインタビューと平成4(1992)年夫である安倍晋

『ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷』/帝国の盛衰の歴史、現代と変わらず

三次にわたるカルタゴとのポエニ戦役に完全勝利し、地中海の覇者となったローマに混迷が訪れる。 ハンニバルとの闘い、強者カルタゴとの闘いにはローマが全力を振り絞って戦い抜き、勝利したものでその後の混迷はある意味必然と言えるものがある。 日本の歴史で匹敵するものととしては、日露戦後の状況に似ていると言えるのではないか。 一方でこのローマ帝国(まだ歴史上普通には帝国となっていない)の混迷は、大英帝国、米帝国のそれを重ねて重厚に思い浮かべられるほどに類似性がある。特に米国の現代史、