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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
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2022年8月の記事一覧

「成功の実現」中村天風著/自身の中にあるまごころの力で生きよう!

ヒトが生きていくためには、内なる活力と外からの刺激の両方が両方とも存在しなくてはならないのは言うまでもないでしょう。 渡部昇一さんは、「人間らしさの構造」で自分の内なる声に耳を澄ましてその声に従って生きよう、と言っています。 また、実際に社会に出ますとそれこそ至る所が競争によって進歩、進展するよう仕組まれていることに気付きます。 おそらく内的なものと外的なものが二つながらに車の両輪のように人間や社会を成り立たせているに違いありません。 どちらが欠けても人間社会は成り立

「西郷隆盛」/西郷さんがわからなければ乃木さんがわからず、乃木さんがわからなければ昭和の戦争がわからないのではないか。

西郷隆盛は幕末から明治維新を成し遂げた日本史の偉人であることに異論はないでしょう。 西郷がいなければ明治維新は成し遂げられなかっただろうと言われます。 実際、幕末の混乱から戊辰戦争と続く流れに西郷なかりせば日本はどうなっていたか。 そして維新直後にもそれが現れています。 それは、それまで時勢を動かしてきた薩長首班藩閥政府の連中は尊王攘夷一本で、あるべき日本政府像を持つことなくひた走りに走ってきただけであった、その中で西郷は、それまでの日本の構造をパラダイム転換してしまいます

「人間通の幸福論 一生のうちにすべきこと、しなくてよいこと」谷沢永一著 PHP 満足できる生き方のコツと人間関係の勘どころ ご一読のすすめ

谷沢永一さんの人生指南書、もう一つご紹介します。前回の「実践人間学 谷沢永一著 講談社」と合わせ、この二つは決定版です。 手軽にポケットに突っ込める新書サイズ、でも読み崩れないハードカバーの165頁の濃密で深く好奇心満載の人生論。 人生ですべきこと、しなくてよいこと、してはいけないこと が、それぞれ48、14、11づつ書かれています。 そして、この人生論は、私たちがもっとも悩み、苦労する人間関係に的を絞って、読書通としてこの人の右に出るものはない谷沢永一さんが縦横無尽に

「実践人間学 谷沢永一著 講談社」/辛口の中に心暖まる人生指南の書のおすすめ

 一人の人間として、近代社会をまともに生き抜いていくのは、誰しもがやっていることではあるけれど、文字通り非常に難しいことです。  お金や名誉をはじめ、何もかもを手に入れることなどそれこそ不可能です。 「自分として何を中心として生きていくのか、何を一番大切なものとして考えるのか、そのポイントを絞った生き方が独り立ちの人生を形作るのである」 と谷沢永一さんはおっしゃいます。  辛口の人生指南書としては、「人間通」も谷沢さんの著作にはありますが、こちらもそれに引けを取らず、むし

「現代化学史 原子・分子の科学の発展」廣田襄著 京都大学出版会

 2013年初版の京都大学廣田先生による、現代化学史を京都大学出版会が英断により刊行してくれています。  化学に志したものは、読んで損はなく、化学において創造的事業(研究、技術開発、製品化)を行おうとするものは是非読んでいただきたいと思います。  人間が社会に出て、近代を生き抜こうとすれば歴史に学ぶことは、ビスマルク(賢者は歴史に学ぶと言ったとか)に言われなくとも、最も大切な自己啓発であろうかと思います。  一方、科学や技術を志すものは、最新の動向に敏感であろうとするも

「次はこうなる/グラフで読み解く相場の過去、現在、未来」ICI.出版 市岡繁男著・・・書評

 個人投資家が相場のマクロ動向を知っておくために置いておくべき座右の書とでも言うべきものです。  昨年2021年12月の刊行で、その時点までの、株式、マネー、金、原油、商品(作物)などなど種々のマネーに関わる長期の動きをグラフ化して、分かり易く紹介してくれている。  著者は、1981年三井住友信託銀行を皮切りに資産運用をしてきたプロ中のプロ、市岡繁男氏。  これまでも、会社べったり人間から距離を置いてきた氏ならではの相場観で大波乱を言い当ててきたとのこと。  たしかに、非

「『ナショナリズムの美徳』ヨラム・ハゾニー 東洋経済新報社」のご一読のすすめ

 ヨラム・ハゾニーによる前掲書のご一読を請いたいと思います。  米国保守を覚醒したという書物でもあり、トランプを支える米国保守の理論的根拠にもなっているらしいです。なるほどそれに値する重厚さを備えていると思いました。  書いてあることは、リベラリズムあるいはグローバリズムとは帝国主義の別名であり、それよりも、複数の主権を持つ国民国家の政治秩序による平和と繁栄の方が本来の意味での個人の自由と繁栄が得られるものであり、帝国主義の世界より歴史的にも道徳的にも優れるものである、とい