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慢性膵炎

以前、急性膵炎について記載した。
「急性」があれば「慢性」もある、ということで今回は慢性膵炎のお話。

簡単に言うと、膵臓が突然強い炎症を起こしたものが急性膵炎、じわじわ弱い炎症を繰り返しているのが慢性膵炎である。

なぜ炎症が起こるのか?

慢性膵炎の原因は、男性では飲酒が最も多い一方、女性では原因不明の特発性が多くみられます。炎症とは、「細菌やウイルス、壊れてしまった自分の細胞等を排除して、自分の体を守る防御システム」である。そのため、炎症は私達にとって必要不可欠なものであるが、ずっと同じ場所に炎症が起きると、「線維化」という現象が起きる。けがをしたとき、治っても引きつれたような傷痕が残った経験がある人もいるだろう。あれは皮膚に線維化が起きた状態である。

つまり慢性膵炎とは、「膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気」である。繊維に置き換わると膵臓の大事な機能である、消化液(=膵液)やホルモンの産生が低下してしまう。

そして慢性膵炎では、約40%に「膵石」とよばれる結石ができる。膵液の通り道である膵管の中に膵石ができたり、線維化によって膵管が細くなったりすることで膵液の流れが悪くなり、痛みが生じる。

慢性膵炎の症状まとめ

<初期段階>

膵臓の機能は保たれており(代償期)、腹痛が主な症状。

<移行期>

慢性膵炎が進行すると、次第に膵臓の機能が低下してくる。

<非代償期>

さらに進行すると、膵臓の機能は著しく低下し、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が起きる。

慢性膵炎の治療

治療には、①病気の進行予防、②症状改善の2つに分けられる。

①病気の進行予防

禁酒と禁煙である。飲酒が膵炎の原因になるのは上に記載したが、慢性膵炎は喫煙も関係している。病気の進行を予防するには酒とたばこをやめる必要がある。

②症状改善

<薬物治療>
鎮痛薬や蛋白分解酵素阻害薬を使用する。
鎮痛薬としては、ロキソプロフェンなどのNSAIDsが使われることが多いが、効果が不十分の場合には、トラマドールなどの弱オピオイドが用いられる。それでも痛みが取れない場合には、下記の非薬物治療が行われるが、非薬物療法に適応とならない場合には、オキシコドンなどの強オピオイドが用いられる。

※蛋白分解酵素阻害薬とは?
膵液中の消化酵素(トリプシンなど)を阻害する薬で、症状の緩和が期待される。慢性膵炎の痛みには、カモスタットメシル酸が用いられる。

<非薬物療法>
・内視鏡を用いて、細くなっている膵管を広げる。
・膵石を内視鏡で除去したり、体外衝撃波で砕く。

これらで痛みが治まらない場合、手術が行われることになる。
手術としては膵管ドレナージ手術、もしくは膵切除術である。
・膵管ドレナージ手術:膵管と腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術。
・膵切除術:膵管の拡張がない場合、膵管の狭窄が最も強い部位を切除する。

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