徒然物語74 因果応報
見つけたぜ!
おれの手に掛かれば、造作もない。
お腹が空いたけど、おやつ棚におやつがない。
けれど、おやつ好きのあいつが、在庫をゼロにするとは考えにくい。
おれに食べられない様、どこかに隠したではないか。
そんな直感を頼りに、ちょいと食器棚の奥を漁れば…
思った通り。
高級そうな化粧箱が顔を出しやがったぜ!
開くと、中身はホワイトチョコレートだ。
こんなところに隠して…
だが、おれの目を欺くには至らない。
一個もーらいっ!
大層な商品パンフレットをはねのけて、一つ口に放り込む。
もぐもぐ…ごっくん。
ふううむ。
なんか、変わった味だな。
不思議に思いパンフレットを見る。
「えっ…」
そこは同じ形の”ブラックチョコレート”が描かれていた。
…まさか…
恐る恐る賞味期限を探すと、化粧箱の裏に2年前の数字が無機質に書かれていた。
うっ…ということはこの白いのってもしや?
…ん?待てよ。
2年前の記憶がおれの脳裏に鮮やかに蘇る。
そうだ。高級チョコを貰ったけど、あいつに食べられまいと思って、おれがここに隠したんだった…
隠したっきり、今の今まで忘れてたんだ…
「ただいま~」
玄関で、嫁の声が聞こえる。
「おやつ買ってきたよ~」
朗らかな声が、家じゅうに響き渡る。
食い意地なんて、張るもんじゃないなぁ…
額に冷や汗が滲んだのは、自分自身の浅はかさのせいか…
はたまた、お腹に違和感が生じたせいか…
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