徒然物語50 ペルソナライダー
うるさいなあ。なんだ、この音は?
ぼやけた頭とは裏腹に、耳は確かにその音を捉えていた。
まるで巨大タンカーの霧笛のような…
鈍い重低音が、わずかな地響きと共に伝わってくる。
半目を開いて横の携帯を見ると、時刻はまだ0時を少し回っただけだった。
寝入ってから、まだ1時間くらいか…てか、こんな時間になんて迷惑な奴だ…
音の正体が、バイクから発せられるエンジン音だと気づくのに、そう時間はかからなかった。
空ぶかしなのか、時折大気をつんざくような高音が混じってきたからだ。
マフラーを改造しているに違いない。
う~ん、起きちゃったよ…
布団の中で寝返りを打ちながら、携帯の光を消す。
真っ暗な空間に、バイクの唸り声だけが響き渡っている。
こんな深夜に、爆音を響かせやがって…
しかも察するに低速で住宅街を練り歩くなんて、一体どんな奴だよ…
どうせしばらく眠れないと観念した私は、ライダーの姿を連想してみることにした。
いわゆる、ペルソナである。
ペルソナ①
地元のヤンキー。若気の至りか、いつの時代にもいるヤンチャもの。茶髪か、金髪か、伸ばし放題で、特攻服なんか着ていたら、イメージそのまんまだな。
これはちょっとベタか?
ペルソナ②
いわゆるDQNおやじ。他人の迷惑を顧みない。ごみはポイ捨て。タバコもポイ。
金色の短髪で、よく日焼けてる。髭は濃い。身長は高いが、丸々太ったいわゆる巨漢。
もっと、面白いのないか?
私は思考をフル回転させる。
ペルソナ③
ヤンキーの肝っ玉おかあちゃん。息子がバイクで散々に遊び呆けているから、堪りかねてたむろ場に突撃。「私がこのバイクに乗って帰るから、お前は歩いて帰ってきな!」豪快にそう言ってバイクをかっさらう。操縦は覚束ないが、昔鳴らした腕を頼りに走り出す。
ドラ息子はそんな母の後ろ姿を見て、自分が犯してきた過ちに気が付く。
そして、今後はまっとうに生きていこうと心に誓うのだった。
なんだ、この話。
おかあちゃん、事故るのが心配だからバイク乗らないでくれよ~。
自分で自分がおかしくなってきた。
相変わらず重低音が闇夜にこだましている。
まあ、いずれにしてもはた迷惑な話だなあ…
「Zzz」
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