徒然物語32 しがらみも、過去も捨てて

野郎ども!錨を上げろ!

エンジンかけろ!

「放銃丸出航~!」

昨日の土砂降りから一変して、本日は快晴。しかしまだ波の高い大海原へ、放銃丸は進路を定める。

おれは、船見習いとして一からスタートを切ることに決めた。

まずは船磨きからのスタートだ。

「下積み3年、操舵7年、縄一生。
だから、船乗りに一番必要な能力は“忍耐力”だ。」

お頭から最初に教わった言葉だ。

この言葉を胸に、お頭のような立派な船長を目指し、おれは今放銃丸の甲板に立っている。

思えばこれまでも困難の連続だった。

数えきれない敗北を喫してきた。


銀玉、メダル、馬、ボート…

気が付いたら雪だるまのように借金が膨らんでいた。

とうとう首が回らなくなったおれに、借金取りが紹介してくれたのがこの仕事だ。

見習いでも、割といい給料が貰えるらしい。

これから、放銃丸はインド洋までマグロを求めて長い旅に繰り出すのだ。

忍耐力…自信はないが、ここまで来たらやるしかねぇ!いくぞ!

同僚たちと、欠けた前歯、無精ひげを惜しげもなくさらし、笑いあう。

新しい仲間とともに、おれの借金返済大航海が幕を開ける!

真人間におれはなる!

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