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愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断されたご家族へ


  • 元気な愛犬がいきなり心臓病と診断?!

  • ワクチンをうちに行っただけなのに心雑音で薬を処方された?

  • 昨日まで元気だったのに突然苦しそうになり肺水腫と言われた?

  • 咳が止まらないし見ていられない?

  • 犬を飼っていたら誰しもが突然訪れる現実かもしれません…

  • そんな状況でパニックになってしまったご家族こそ、一度落ち着いて読んでみてください。

そもそも僧帽弁閉鎖不全症って?


僧帽弁の逆流により, 左房は拡大し, その手前で血液の渋滞が起こり, 肺で血液の大渋滞が起こります。

血液は肺で酸素を取り込み、心臓から全身に送られます。心臓の中には4箇所に弁(逆流を防止するための扉)があり, これらにより効率的に血液が循環するのですが, 肺から帰ってきた血液は左房, 僧帽弁, 左室を通過し全身に送られます。この左房と左室の間の弁を僧帽弁を言います。加齢により僧帽弁が壊れた時に逆流が生じ, 血液は左室と左房を行ったり来たりします。この状態を僧帽弁閉鎖不全症と言います。
わんちゃんの心臓病の80%以上がこの病気と言われています。

何で僧帽弁閉鎖不全症になるの?

基本的には遺伝子によるものと考えられています。
つまりはお父さんとお母さんからもらったものであり, 生活や食事は関係ありません。
生まれた時は綺麗な僧帽弁だったものが, 年をとるにつれてブヨブヨに変形し, 弁を支えている紐は切れたり伸びたりします。
9歳以上で58%, 13歳以上で90%以上のわんちゃんで軽度〜重度の弁の機能不全が認められています。
これは小型犬に多く, チワワ, トイプードル, ポメラニアン, マルチーズ, シーズー, ヨーキー, M・ダックスで非常によくみられます。またキャバリアでは若い年齢から発症することが知られています。
性別は雄に多いことが報告されています。

心雑音が聴こえたらどうしたらいい?

まずは精密検査を受けましょう。可能であれば専門医の診察を受診しましょう。
心臓の検査は検査者の技術に大きく依存します。
心臓超音波検査によって心臓の状態がはっきりとします。重症度や治療は今や心臓超音波検査なしに行うことはできません。
治療の必要性は心雑音の有無ではなく, 心臓の状態次第です。

心臓が大きいと言われたのですが?

○レントゲンで心臓が大きい場合
レントゲンは心臓のシルエットのため, 細かい大きさの評価はできません。
基本的に心臓超音波検査で心臓の大きさをチェックしましょう。

○心臓超音波検査で心臓が大きい場合
ある一定の大きさを超える場合は投薬が必要です。
下に記載してあるように, このような状態はステージB2と言われ, やや進行した状態です。

どんな症状が出ますか?

人では息切れや, 横になった時に呼吸が苦しくなりますが, 犬では息切れは非常に認識しにくく, 咳が一般的な症状です。
犬の咳は喉につっかえたようなむせるような咳が多く, 吐きそうで吐かないようにも見えるのが特徴です。
さらに進行すると, 肺に水が溜まり(これを肺水腫と言います)呼吸困難を起こしたり, 心臓が破裂したり, 失神したりすることもあります。(逆に言うと進行しないと認められないため, 初期の方はご安心ください )

重症度(病気の進行具合)はどうやって決められるの?

僧帽弁閉鎖不全症の重症度はA〜Dに分けられます。
Aが最も軽く, Dは最も重症です。

○ステージA

もしあなたがキャバリアやチワワ, トイプードルを飼っていた場合, 生まれた時からあなたの愛犬はステージAとなります。
なぜならステージAは将来僧帽弁閉鎖不全症を発症するリスクが高い犬種の全てが該当します。
生まれた時からあなたのご家族はステージAから始まっているのです。

○ステージB1

僧帽弁の逆流はありますが, 軽度のため心臓が大きくない状態です。
投薬の必要はありません。

○ステージB2

僧帽弁の逆流により, 心臓が大きくなってしまっている状態です。
このステージでは無治療で50%のわんちゃんが766日以内に呼吸が苦しくなったり, 心臓病により命を落とします。しかしピモベンダンという薬を飲むことでこの766日は1228日まで延長します。

つまりお薬を飲むことでわんちゃんはもっと楽に過ごせるようになります。

○ステージC

残念ながらかなり進行した状況です。
一度でも肺に水が溜まったわんちゃんが該当します。
このステージでは50%のわんちゃんが約9ヶ月以内に命を落とします。
利尿薬の投与がほとんどの症例で必要となります。

○ステージD

大量の利尿薬が必要なわんちゃんです。
もう飲み薬では難しいため, 一日でも早く外科手術を検討してください。

どんな治療があるの?

基本は飲み薬です。
血管拡張薬, 強心薬, 利尿薬を組み合わせて治療を行います。
どの薬が必要かは検査により判断されます。

しかし最近は外科手術で僧帽弁を根本的に治すことができるようになりました!
それを実施できる施設は世界でも一握りであり, 日本では関東に2カ所, 名古屋に1ヶ所, 大阪に1ヶ所になります。それ以外の施設でも実施は可能ですが, 専門的な施設ではないため注意が必要です。

手術が無事に成功すれば, 投薬をする必要もなく, 肺水腫に怯える必要もありません。
あなたのご家族が少しでも幸せに毎日を暮らせますように。

まとめ

  1. 僧帽弁閉鎖不全症は遺伝で起こる小型犬に多い病気

  2. 進行すると呼吸困難になる

  3. その重症度は様々。それを調べるには超音波検査が必須。

  4. 治療の中心は飲み薬。あなたの家の近くに施設があれば手術も可能!

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