ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉛休戦協定
👆 ステラおばさんじゃねーよっ‼️㉚懐古〜まさかの再会 は、こちら。
🍪 超・救急車
「ただいま…」
静けさに包まれた我が家へ、どうにか帰宅した知波は安心感からか脱力し、リビングのソファに崩れ落ちた。
ここ数日立て続けに起きた出来事に、思考と感情がパンクし、知波は心身ともに弱りきっていた。
耳孔の奥では壊れた蓄音器のように、聖の言葉がリフレインをやめない。
「あーあ、やっぱり天罰、天罰、天罰…」
知波の脳内を占領していたのは、自分と聖しか知らないあの場面のフラッシュバックと、それを他の誰にも絶対知られてはいけないという焦りだった。
聖はきっとわたしを裏切らない。
わたしたちはずっと、運命共同体だから。
聖が余命3ヶ月という事実にはもちろん、衝撃を受けた。
けれど彼女のわずかな余命より、自己保身の事ばかり都合良く考えてしまうとは。
利己主義で性根が腐りきった人間なんだな、わたし。
「吐き気がする、はずだよね」
歩からぶつけられた言葉を、知波も自身にぶつけていた。
⭐︎
階段を降りてくる足音が聴こえる。
誰?
歩?
あの子は今、学校へ行ってるはず。
浅い夢から意識が戻り、知波は薄目を開いた。
「ママ?」
歩の顔が、知波をのぞき込む。
「歩!?なんで?」
歩は、無表情で知波に言った。
「学校、行ける気分じゃなかったから」
知波は再び熱が上がっていくのを感じたが、重だるい身体をゆっくりとソファから起こした。
「ごめんね。ママが嘘ついたのはいけなかった。歩、ママから提案なんだけど、聞いてくれる?」
咳混じりにそう伝えると、歩は知波の額に冷たい手を置いた。
「ママ!すごい熱だよ!?夜勤の時どうしてたの?」
「出勤してすぐにね、ロッカールームで倒れちゃって。気づいたら朝になってて、仮眠室で寝かされてた。点滴も打ってもらったから大分良くなったんだけど」
「あたしママを、追いつめちゃったんだ」
半べそになりながら歩は、知波のそばに座り込んだ。
「歩のせいじゃないよ。全部、ママの」
と言いながら、知波はまた咳込んだ。
「わかった。今は、休戦協定を結ぶって事にしよ!ママが元気になったら、言い訳〜じゃなくて、言い分を聞く事にする!」
そして歩はおかゆを作ると言って、急にはりきりだした。
キッチンから歩の鼻歌がかすかに聞こえてきて知波は少しばかり安心したが、「天罰」のリフレインを吹き飛ばす事はできずにいた。
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