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ステラおばさんじゃねーよっ‼️⑧母娘(おやこ)の絆〜猫キャラアイコンと娘

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ⑧母娘(おやこ)の絆〜知波と歩 は、こちら。


🍪 超・救急車


さて、今からアイスカフェオレでも飲みながら、SNSの返事を書きますか。

食後に淹れたアイスカフェオレを一口含み、テーブルにあるスマホに手をのばした。

それが、知波の最近の日課になっていた。

なぜなら知波は、例のSNSで面白いアカウントの人を見つけてしまったから。

年齢、性別不詳。唯一わかるのは職業と、アイコンにしている日本一有名な猫のキャラクターが好きなんだろう、という事だけ。

知波のスマホ画面にズラリと並ぶアプリのうち、水色に白い星を模したマーク。

世界中で利用されているSNSの、アプリの目印である。

SNS登録時にちょうど、知波の夫は肺がんを宣告されたばかりでアプリを開く余裕などまったくなかった。

娘の子育てに自身の仕事、そして夫の闘病サポート。

しかし治療の甲斐なく、夫は亡くなり、あれから5
年の月日が経っていた。

娘の歩は高校三年生となり、知波と同じ看護師を目指すべく、休日には大学や専門学校のオープンスクールへ積極的に参加している。

たまにふと、知波は思う。

わたしは歩にとって、良き母親であったのか、と。

歩は目立った反抗期もなく、友達もたくさんいて、いつもわたしにとびっきりの笑顔をくれる。

わたしはいつも歩の笑顔に救われ、癒されて生きられている。

父を亡くした時も、歩はわたしや親戚の前では気丈に振る舞い、葬儀中は一切涙を見せなかった。

そして火葬場に着き、父との最期のお別れをし、棺(ひつぎ)は火葬するための窯におごそかに入れられた。

棺が入れられた窯に火が入った直後、ぼっ、という音がした。

その音で、感情の堰(せき)が一気に切れてしまい、歩はわめき叫んだ。

そして親戚の叔父さんらに連れられてその場を離れる間も、大声で泣きじゃくった。

あの時の歩の姿を、わたしは一生忘れないだろう。

のちに、歩にあの時の光景について心情をたずねてみたが、歩はあっけらかんとした様子で、

「あんまりあの時の事は、覚えてないんだよね」

と言って、笑った。

「けど、棺に火が点いた音を聞いた時、ああパパ、燃やされちゃうんだな。さっきまで眠っているかのような姿のパパにはもう会えないんだな。すごくさびしいな、って思ったんだよね」

そんな強くて優しい、わたしのかけがえない娘。

わたしは彼女にとって、かけがえのない母になれているのだろうか。

知波は気持ちが重くなりそうだったが、朝のアナウンサーの真似をしている歩をふっと思い出し、フフッと口元がゆるんだ。

さっきの感傷をどこかに追いやった知波は、さてさてと、例のSNSアプリをタップするのだった。

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