ステラおばさんじゃねーよっ‼️98.破水
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️97.里帰り は、こちら。
🍪 超・救急車
鳥海島からの帰船で歩がひかりに想いを馳せてから早5ヶ月が経ち、ひかりは臨月を迎えていた。
出産予定日間近になると、ポーちゃんは産休を取得し、ひかりの初産に備えた。
この頃になるといつ産気づいてもいいように、神林家のスタッフも四六時中、総出で見守った。
ひかりとポーちゃんの寝室には既にベビーベッドをはじめ、衣類、おむつ、遊具等が所狭しと置かれている。
性別は女の子だと事前に聞いたが、万一に備え男の子用の衣類や遊具も用意した。
4月最終日の爽やかな風に吹かれ、ポーちゃんに手を引かれ自宅の庭を散歩していると大きくなったお腹に手を当てたひかりが、
「痛っ」
と崩れその場にうずくまった。
それと同時に破水した。
ポーちゃんは慌てふためき、
「ばあや!ばあや、早く来て!!」
と叫び、給仕の老女を呼んだ。
老女らが来る間ポーちゃんは、
「ひかり、ばあやを呼んだからもう大丈夫だ!ひっひっほー、だっけ?ひゃっはっはっー???」
本で見知ったたラマーズ法を、ひかりに懸命に伝えようとする。
激痛に身をよじり、ポーちゃんの天然ぶりにかまう余裕すらない。
担架と数名の男性スタッフを引き連れ、老女はひかりめがけて飛んできた。
「ひかり様、大丈夫ですよ。苦しいでしょうけれど一旦深呼吸してみましょう」
声掛けするとすぐに助産師へ電話し、
「至急来るように!」
と呼びつけた。
ポーちゃんは茫然とその光景をただただ見つめるしかなかった。
一気に、途轍もない無力感に襲われた。
しかしすぐに我に返り、担架で運ばれるひかりの傍にぴたりと付き必死に声をかける。
「ひかり、大丈夫だ。僕はここにいるよ!」
⭐︎
寝室に運び込まれたひかりは、陣痛の波に翻弄され、痛みに耐える時間がしばらく続いた。
ひかりの子宮口がかなり開いてきた状態を助産師は確認しながら、
「深呼吸してー、一旦息を止めて、ゆーっくり深ーく、吐くー」
というフレーズを何度も繰り返した。
そして赤児が下へ降りてくるように、ひかりをしっかり励ましながら母体の急変にも目を光らせた。
その間ポーちゃんはひかりの手を握り、助産師に言われた通りの呼吸法を一緒にやり、産みの苦しみに寄り添うしかできないでいた。