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狐のつまみ合い

お久しぶり、フィンランド在住コーディネーターのこばやしあやなです。

我ながらびっくりしました。2年前にしれっとnoteのアカウントを作っていたことも、ひとつ記事を投稿していたことも、完全に忘れてしまっていたのですよ。。。先日、満を持してアカウントを取ろうとしたら、「そのアドレスはもう登録済みです」だなんて言われて、エエーー!?!? となって…

まして、前回の記事で「このnoteでしか読めない、とあるテーマを掲げた有料記事コンテンツのマガジン連載を開始しようと思います!すでにテーマは、頭の中にあります。」なんて高らかに宣言しているものの、いったい何について有料記事なんぞ書く意欲を持っていたのか、2020年のわたしはもうさっぱり思い出せません。あの記事ホントに自分が書いたの?ってくらい、これぞ狐につままれた気分…。

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ただ、投稿されたタイミングから察するに、たぶん当時ずっとあたためていた「フィンランド公衆サウナ本」の日本での出版実現に向けて、あわよくば業界の方の目にとまることを祈りながら、少しずつ関連記事を書きだめてゆくつもりだったのかなあ…という憶測ははたらきます。

思えばあの初回記事を書いてからここまでの2年間、わたしの人生やキャリアは、当時では想像もつかないくらいに、大きな変化を目の当たりにしました。逆に2年前の自分が今の状況を知ったら、それこそ狐につままれたかのごとく、大慌てするのでは…というくらいには。

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フィンランド・ユヴァスキュラ大学院の文学研究科に "Yleisen saunan merkitys nyky-yhteiskunnassa : 2010 -luvun Helsingin uusien yleisten saunojen toimintakonseptien perusteella" (現代社会における公衆サウナの意義:2010年代にヘルシンキで実現した公衆サウナ・プロジェクトのコンセプト分析に基づいて)という修士論文を提出し、それが学内最優秀論文に選出されたのがきっかけで、フィンランド国内の〈サウナ業界〉で「サウナ文化研究家」として認知され始めたのが、2016年春のこと。ただその後しばらくは、フィンランドでの起業を果たし、本業のメディアコーディネーター業をこなすほうに手一杯・精一杯な日々でした。

突如、あの幻の記事が投稿された2018年の春は、会社もぶじに2周年を迎えたので、そろそろ自著本出版という長年の夢を叶えるべきころか…と、ついに腰を上げて外向きに思いを発信し始めた時期だったと記憶しています。奇しくもその頃の日本は、現在わたしたちが目の当たりにしている空前のサウナブームの夜明け前。そんな絶妙なタイミングも味方してくれて、結局そのままnoteを更新する必要性もなく(笑)、あっという間に学芸出版社の編集者さんとの縁談がまとまったのでした。

こうして、初の自著本として2018年の暮れに世に生み落とされたのが、『公衆サウナの国フィンランド』。大学院時代に調査や考察に没頭していた、「戦後廃れた公衆サウナ(フィンランド版銭湯)業界が、今ふたたび盛り上がってきたのはなぜなのか??」というシンプルな疑問への答えを詰め込んだ一冊です。老舗サウナから最新サウナまで、さまざまな施設のオーナーや活動家たちの情熱的なインタビュー録も書き下ろしました。

ただ、実はこの本が本当にフォーカスしているのは、タイトルにも表れているように、公衆サウナの国である「フィンランド」のほうだったりします。サウナや公衆サウナという特異な文化が根付くに至った、フィンランドという国の風土や歴史背景について。そしてその文化を支える、現代の社会や民族のおおらかな価値観について。他方、昨今どんどん他者への同調圧力や誹謗中傷がエスカレートしているように見える日本社会への警鐘メッセージも込めて、わたしたちがフィンランドという国から学ぶべきだと感じる点も率直に書きました。

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文章自体は誰でも読みやすいように努力しましたが、とはいえ学術論文がベースになっているので、手に取られた方は、想像以上に活字が多く内容もいちいち深堀りされていて、ややびっくりされたかもしれません。

けれどおかげさまで、ニッチすぎるテーマの本にも関わらず、サウナ好き・銭湯好き・フィンランド好きの皆さんを中心に温かい感想をいただき、一時帰国中は書店以外でも多くのイベントやサイン会に呼んでいただき(全国津々浦々、計60本のトークイベントに駆けつけました〜)、メディアでもたくさん取り上げていただきました。

(ちなみに、この期に及んでもしまだ読んでらっしゃらない方は、責めないのでこっそり上のリンクからの購入お願いしますね笑)

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また、この公衆サウナ本の出版がきっかけとなって、弊社に舞い込んでくる本業のご依頼内容にも劇的な変化がありました。とにかくフィンランド・サウナ関連の番組撮影や記事執筆の仕事が増えたし、専門家の立場からわたし自身の意見を求められたり、サウナにフォーカスしたツアーやコンテンツ、商品開発の監修をお願いされる機会も多くなりました。

そしてさらには、「日本人が、フィンランドのサウナ文化についての学術論文に加えて一般書を母国で出版したらしい」…という珍エピソードがロウリュに乗って各地へと流れ、フィンランド国内や、果ては周辺諸国のサウナ関係者やメディアからも、取材や対談の申し込み、視察やご当地サウナ浴体験への招致連絡をいただくようになったのです。

「フィンランドのなんでも屋」だなんて大雑把な大見栄きってた自分が、サウナという支柱を得て、母国でも異国でも、他でもないわたしを必要としてもらえるプロジェクトに関われるチャンスが増えたこと。このことでぐっとお仕事の充実度や自己肯定感が高まり、しかも日本や世界のサウナ文化牽引者の皆さんとの交流も深まって、結果、確実に日々の幸福感(とサウナの頻度)が増しました。つまりこのnote上の空白の2年間は、わたしのここまでの人生において、尊いまでにいいこと尽くめな楽しい日々だったというわけです(そしてそのハッピーな毎日の積み重ねは今もまだ記録更新中)。だから、せっかくの意思は継げなかったけどそのぶん楽しみにしててね、2年前のわたしよ!笑

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今現在、世界は、これまた2年前の自分には大狐の幻惑としか思えないであろう未曾有のフェーズに翻弄されています。わたし自身は、もちろん仕事の形は大きく変容してしまいましたが、むしろこれまで仕事もサウナ関係も、目の前のことをまっとうするためだけに、がむしゃらにひた走ってきた分、以前より物事をゆっくり反芻したり知見のインプットに充てられる時間的・精神的余裕のある今の生活が、実はわりと気に入っています。いろんなゆとりのある今だからこそ、やりたいことも次々と頭に思い浮かんでいて、いまnoteを始めようと思ったのも、その流れに導かれてのことでした。

既視感のある、そしてもはや信用ならない言葉かもしれませんが…、「すでにテーマは、頭の中にあります」。たぶん…2年前のアイデアとは異なるでしょうが(笑)ちなみに、記事を有料にするかどうかは、まだちょっと迷っています。

すでに十分長くなったので、そのテーマや執筆に寄せる思いについては、次の記事で改めて綴りたいと思います。また次の更新が2年後とかにならないように、今度は目を光らせておいてくださいね…笑

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フィンランド在住の自営業者。Suomiのおかんというふざけた屋号を掲げ、メディアコーディネーター、通翻訳者、文筆家、フィン語講師として快活に仕事し遊んでいます。2018年に著書『公衆サウナの国フィンランド』を出版、いつの間にやら「サウナ文化研究家」としてのお仕事依頼がメインに。

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