膝が痛いだけで孤独死寸前→入院→今日生還したITコンサルの怖い話(第5章:私、麻雀覚えたいんですぅ)

5月8日、膝の痛みとの闘いにより、自室で程心と再会した時の雲天明のような状態(注1)になっていた俺は、なんとか試行錯誤の結果立ち上がり、救急車を呼び、日大病院へ辿り着いたのであった。今回は第4章に続き、10日(月曜日)の夜からの出来事である。

夕食を済ませ、今日が麻雀のMリーグ、ファイナルシリーズの初日であることを思い出した俺は、さっそくiPhoneのABEMAアプリを立ち上げ、壁のテレビにはYoutubeの「ドリブンズ クラブハウスLive中継」を立ち上げた。
ABEMAで麻雀の本放送、Youtubeでそのうち1チームの楽屋での一喜一憂が同時に見られる万全の態勢だ。本放送だけでなく、関係者側の周辺コンテンツが充実してくると、相乗的に楽しみ方が広く深くなり、いろんな層がいろんな楽しみ方を選択できるようになる、良い傾向だ。

19時半を過ぎ、放送を見ていると、今日の当番看護師がやってきた。そういや昼間に検温と血圧測定に来てたのもこの子だったっけ。

ちょっと気の強そうな、松たか子要素が46%程度入ったその看護師は、俺のスマホ画面を見て、

松46% 「あ、麻雀ですかー? 私麻雀すごい興味あるんです!」
俺    「へーそうなんだ。Mリーグって知ってる?」
松46% 「わかんないですけど、患者さんがよく見てて気になってて。」
俺    「こっちが放送ね。有名な麻雀プロがチーム対抗で試合してるの。で、あっちがそのチームの楽屋配信ね。」
松46% 「すごいですねー。麻雀ってどうやったら覚えられますか?」
俺    「うーん、とりあえず優しく教えてくれそうなお店行って、やってみるのが一番かなあ。やっぱ、実際に打って楽しむとこから入らないとね」
松46% 「そうなんですよー やってみたいんです。」
俺    「そしたら、お金かけないお店で初心者の相手をガッツリしてくれそうなとこだよなあ。新橋のベルバードとか、そういう意味では最高かも。それと、西葛西にねこポンっていう、猫のぬいぐるみとかいっぱい置いてあるお店もあるねー」
松46% 「あ、今のメモしとかないと!」
俺    「店の名前で検索したらすぐ出てくると思うよ」
松46% 「麻雀屋さんの看板あちこちにあるじゃないですか、そういうとこですよね」
俺    「うん、まあ。でも適当な店にいきなり入っちゃうと大変だと思う。お金掛けてて1時間に何千円もどんどん取られたり、めんどくさい客が絡んでくるとかあるし。」
松46% 「そうなんですねー」

半分は患者とのコミュニケーション用の社交辞令的なやつかなと思っていたら、3日後の木曜にナースステーション前を通りかかった時に、

松46% 「suohさん、フリテンってなんですか?」

と声をかけられた。あら、結構マジで麻雀したいのかな。

俺    「えーと、麻雀でアガる時って他人が捨てたやつにロンっていう時と、自分で持ってきてツモっていう時があるんだよね。」
松46% 「うんうん。」
俺    「で、これが来たらアガれるって牌がいくつかあるとするじゃん? そのうちどれか一つでも自分で捨てちゃってると、他人にロンて言えない。」
松46% 「なるほどー」
(同順内フリテンの話は求めてないだろな)
俺    「ちょっとこないだ言ったお店の人に初心者教室どんな感じか聞いてみるわ」
松46% 「ありがとうございますー」

で、ベルバードから送ってもらった初心者教室画像を彼女にAir Dropで渡した。

ちなみに翌週退院後、ベルバードに遊びに行ったら、ご本人が友達連れてホントに来ていて、「昨日から連続で来てるんですよ、麻雀楽しい」、ってことでした。
楽しんでいただけて何よりです。

さて、入院生活に話を戻そう。

Mリーグ後は、Youtubeでサンドウィッチマンとかまいたちの漫才動画を眺めていた。どちらも会話のちょっとした意外性と笑いの振り幅が広くて面白い。ロキソニンで昼間うつらうつらしてたからか、朝の3時ごろまで眠れなかった。

そして11日(火曜)の朝。

検温と血圧測定、お通じ回数確認のルーチンを終えると、手帳サイズくらいの紙を渡された。

11日予定

リハビリか、何するんだろ、ていうか9:20ってすぐじゃん。どうすりゃいいの?と悩んでいると、朝食のワゴンがやって来た。ミニコッペ2つと野菜の健康的なメニュー。急いでかじりついていると、昨日「リハビリ!」と言い残していった、「小栗旬要素が38%程度感じられるイケメン医師」が、「クラオタかもしれない吉高23%先生」を従えてやってきた。

昨日特に何の説明も受けずにサインだけした「入院診療計画書」では、吉高23%先生が担当医師になっているが、完全に小栗38%先生が実質的担当になったようで、23%先生は昨日から後ろに控えて一言も発しようとしない。

小栗38% 「ちょっと左足伸ばしてみて」
俺     「はい」よいーーしょっと。相変わらず痛くて動きが悪いが、ロキソニンが効いている分、ズキィィンという痛みは薄れている。
小栗38% 「はい、曲げて」
俺     「はい」グググ。ちょっと吊りそうになったが何とか直角より深い角度までは曲がる。
小栗38% 「この調子で曲げ伸ばし意識してね」

終了。時間的にはこれが「リバビリ」ってこと?うーむ。

その後、よく知らないおじいちゃんがやってきて、「食事7割、運動3割。日頃から意識して」とかそう言った趣旨の念仏を唱えて30秒くらいで去っていった。ひょっとしてこれが消内再診ってやつか?


今日は火曜日なので、個室から四人部屋に移動する予定になっていた。
月曜にベテラン看護師から移動時間帯について希望を問われたので、「明日はリハビリやシャワー、トイレなど部屋で済ませてからゆっくり移動したいので午後の遅い時間が良いです」、と答えておいたのだ。

10時45分。
個室の入り口に、看護師らしき人が現れて、こう言った。

「これから四人部屋へ移動してもらいますので、10分以内に持ち物をまとめておいてください。」

あれ?午後という話になっていたのでは?
と思ったがめんどくさいので「わかりました」と答えた。

その「1、2分後」、今度は別のおばさん(どういう立場の人かよくわからない)が現れて、バタバタと

「それじゃ移動しますからね、荷物どちらですか?」

と言った。

俺 「いやさっき別の人が10分後にって言ったから準備してるんですけど、、、」

「あらそう。」

と去っていった。

そういえば、昨日もこんなことがあった。
入院用寝巻きレンタル業者が部屋の入り口にやってきて、「個室はレンタル料込みでしたが、明日から料金がかかります。申し込みますか?」と聞くのだ。

申し込みますかと言われても、値段を聞かなきゃ判断しようがないだろと思い「いくらですか?」と聞くと、オプション付きで一日600円程度だという。

俺 「はいはい、申し込みます。代金は退院時に支払いですか?」
業者「退院後に、ご住所に請求書を送りますので、こちらに住所を記入してください」
俺 「あー別になってるんだ、、、」

指定業者で個室なら無料とかシステムに組み込まれてるのに、請求は完全オフライン紙対応かい。俺は昭和の時代に舞い戻ってしまったのか?


何だかなーともやもやしていると、15分後の11時に、最初の看護師が来た。
「準備できてますか、行きますよ」

点滴は繋いだままだ。ソリューゲンF注とセファゾリンNaを1日3本入れている。

看護師 「こちらの右奥のベッドになります。よろしくお願いします」

と去っていった。

四人部屋だが、今のところ空室で、住人は俺だけなようだ。ラッキー。

足もキツい。荷物を置いて、ベッドに横たわろう。

と、点滴が右腕に刺さっているので、点滴ハンガーを右側に置いた形でないと寝られない、しかしこちらのベッドの乗り降りが左腕側に設定されているため、乗り降りしようとすると、点滴ハンガーが届かず右側に持って来れないことが判明。個室と四人部屋で頭の向きが反対なのだ。このままではベッドに横たわることができない。

マジでいろいろイケてないなあ、とさすがに嘆息しつつナースコール。

そしたら、ベッドの横の手すりって自分でガシャンと開閉できるから左のを畳めば良いのだと教えてくれた。いや点滴繋げてて足の曲げ伸ばしも痛いのに、それ無理ゲーですって。

ちょっとイラッとしながら聞いてみた。
俺  「ちなみに私、ペットボトルの水普通にガブガブ飲んでますけど、このソリューゲンっていうの、まだ必要あります? 水分補給用って聞きましたけど」

看護師 「・・・」

去っていった。

そんなこんなで昼飯。徐々にご飯の量が増えて一般食というカテゴリーになったらしい。

個室とは打って変わって小さなモニターのようなTVで「ひるおび」にチャンネルを合わせてみた。平日昼間の地上波とか、全く見ないのである意味新鮮だった。「このカーク船長(注2)みたいなコメンテーター、さっきから全く意味のないことを意味ありそうな口調で言うだけじゃん。胡散臭すぎ。」とか思いながら昼飯を済ませ、さて今後の入院生活どうなることやらと思いを馳せていると。

また別のおばちゃん(どういうポジションの人か不明)がやってきて、

「リハビリの時間過ぎてますよ!」

と慌てた様子で言う。

俺   「えっと、9:20って予定に書いてあって、どうなったのかなと思ってたんですけど」
謎の女性「予定変わったんですよ、聞いてなかった?」
俺   「いや全く」
謎の女性「とにかく行きますよ。リハビリルームは3階です」

スタスタ歩いて行く謎の女性に必死で足をひきづりながらついて行く。
点滴は針が刺さったまま管の先の部分だけテープで止めた状態だ。

そして3階のリハビリルームへ。

俺を迎えたのは、長身細身で、くしゃっという感じの笑顔が印象的な若手リハビリトレーナー(というのが正しいかよくわからない)だった。

入院経緯、膝の状況、どこをどうすると痛い、といったことを説明し、リハビリ用のマッサージベッドに仰向けになる。

さっそく、膝を持ち上げたり、角度を変えたり、可動域を試したり、、、

(痛くない! 持ち上げ方とかすごく丁寧で上手!)

なんか筋肉靭帯系の痛み方な気がしていて、痛みの引かない理由が外科的な亜脱臼とかじゃないか気になるって言うと、

「この、膝のお皿触った時の弾力の感じだと、脱臼とか靭帯切れてるとかはないと思います」

説得力あるなあ。そういえば初日にとったCT、なーんにも結果についてコメントもらってないけど。

結局その日は膝の曲げ伸ばし、大腿部のマッサージなどを行い、少し歩いて負荷をかける訓練を行った。ちょっとほぐれて楽になったような気もする。

ちなみに、申し込んだはずの入院用寝巻きは届いていなかったが、個室側でもらっていた2日分のストックがあったのでそれで済ませた。

ナースステーション前でシャワー室の予約をし、18:30からシャワー、身を清めて夕食、Mリーグ視聴、というルーチンが始まった。

入院用の寝巻きは、全く伸縮性のない生地のもので、普通にストレッチ素材にしてくれたらシャワー時の着替えもしやすいし、ベッドで横になっていても突っ張らなくて体勢が変えやすいのに、と思った。
(続く)

注1
三体Ⅲ (Death's End) の序盤。三体は中国SF作家 劉 慈欣 の世界的大ベストセラーSF三部作。隅から隅までセンスオブワンダーに満たされた、適度に本格派、適度にぶっ飛んだ小説だ。長い間日本語訳されていなかったが、ここ2年で2作目まで出版され、3作目が来たる5月25日に発売される。筆者は2作目が面白過ぎて、どうしても我慢できず3作目を英語版で読んでしまったが、やはり熟練のプロ翻訳家による日本語版はマストバイ。指折り数えて待っている。

注2
アメリカの宇宙SFテレビシリーズ「スタートレック」の初代シリーズ「宇宙大作戦」で宇宙探査の旅を続けるエンタープライズ号の初代艦長
初代のシリーズなので、セットや着ぐるみのクオリティが、勇者ヨシヒコと同じくらいだ。ハリボテと戦ってわーーーって言ったりするぞ。でもストーリーがマジで面白い、ハマる。

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有料にしてるのは、個人的に尊厳が問われたりしそうな恥ずかしいとこは誰が読んだか知っときたい、くらいの軽い気持ちですんで、そのうち全部無料公開にする気がします。

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