膝が痛いだけで孤独死寸前→入院→今日生還したITコンサルの怖い話(第3章:膝も痛いが数値も痛い、の巻)

5月8日、自室で貧者の薔薇を食らったばかりのメルエム(注1)みたいな状態になっていた俺はなんとか試行錯誤の結果立ち上がり、救急車を呼び、日大病院へ辿り着いたのであった。第2章では搬入後のやりとり、検査について事実をありのままに描写してきた。この記事はその続きである。

膝のCTを撮り終え、ストレッチャーに移りまたさっき来た道をガラガラゴロゴロと救急対応部屋に戻った俺は、残量30%くらいのiPhoneで、実家などに「なんか膝が痛くて病院きたら、PCR受けさせられて入院することになっちゃった」と連絡し、点滴2袋目等々を受けつつ、たまに様子を見にくる看護師に「なんか足首も腫れてて、こっちは痛風だったりしますかねえ」とか「ミネラル入れてもらったらちょっと足が吊りにくくなってきたような!」とか「ニンニク注射(注2)的なやつ打ってもらったりしたいなあー なんちゃって」などと話しかけて、時間を潰していた。

30分ほど経った頃だろうか、再び吉高要素が23%ほど感じられる女医が現れ、こう言った。

女医  「胸部CT撮りに行ってもらいます」
俺   「胸部ってことは、コロナ的な方のやつですか?」
女医  「そうですね。」

この時点で既に俺は、ここの病院の人たち、あまり段取り良くないというか、いろいろ情報連携とか緩いのではないか、という危惧を抱いていた。それが個人の能力的な問題なのか、訓練の問題なのか、環境なのか、基盤システムの問題なのかはわからない。

コロナ対応ってことは、最初から胸部CT撮ることはわかっていたはず、なのにさっき膝のCT撮る時はそれが完全にタスクから抜け落ちていた。さすがに同じ部屋に2往復して再度イチからCTって、わかっててやらんと思う。
世の中で叫ばれてる医療従事者の人手不足、体制逼迫、過重労働というものが、こういった簡単に削減できる明らかに無駄な工数を積みまくった挙句の話なら、問題は別のとこにあるんじゃねーかな、それとも日大だから(注3)この程度の管理なのか?とか考えつつ、、、

ガラガラゴロゴロ。再びストレッチャーでCT室へ。

またさっきのおっさん若手コンビが待っていた。

先に看護師が「自分で移動した方がいいですよね」と言ってくれる。

ヨイショ、ヨイショ、と慎重にCTベッドに移動完了。仰向けの状態だ。

おっさん 「手はこう上げる!」
と肘を曲げた状態で上に上げさせる。

その状態のままCTのトンネルに「グイーン」と少しずつ吸い込まれて行くので、このままだと肘がトンネルの天井に引っかかると思った俺は

俺   「あ、あの、腕引っかかりそうな気が、、、」

おっさん「だから、腕勝手に上げないで!、こう!」

と肘を伸ばした万歳姿勢に修正させる。

いやいやあんたが指示したんやんけ。

人間、どこかが痛いと、不思議と怒りの気持ちも膨らまないようにできているらしく、モヤモヤしたものを感じつつも、言われるがまま、なすがままに胸部CT撮影完了したのであった。

また救急対応の部屋に戻ると、「お部屋の準備ができてます」とのことで、ようやく一泊39,600円の9階個室へ。

この時点で20時は回っていたと思う。点滴はソリューゲンF注を繋いだまま。iPhoneの充電器をセットし充電開始。

この時点で俺はPCR結果が出ていないコロナ候補者群に入っていたため、その個室は汚染地帯扱いとなり、部屋に出入りする看護師、医師はその都度入り口の外で水色のゴミ袋ぽいものを体に装着し、顔は透明なシールドで防護していた。

部屋のベッドは介護用の電動のやつで、膝部分の高さ、上半身、全体の高さをそれぞれリモコンで変更できるタイプの優れものだった。

俺の胸3ヶ所には粘着パッドが貼られ、こんな装置に繋がっていた。

画像1

これで脈拍や呼吸をモニタリングするらしい。いやまあ膝が痛いだけなんだけどね。

用があったらいつでも呼んでくださいと言われたものの、どの程度の「用」で、わざわざ呼び出していいものか、空気が読めずとりあえず壁に設置してある大型液晶テレビを点けてみる。

地デジ、BSの無料チャンネル、YouTubeは見られるようだ。TVのリモコンでYouTubeのログインを試してみたら普通にいけた。これで月曜まで、瞑想以外の時間を潰す手段が見つかった。

何を隠そう、俺は元々遠視気味のこともあり、iPhoneの細かい文字とか読むのが相当厳しいレベルの老眼である。そのため日頃は常時iPadPro10.5インチをスマホがわりに使って動画視聴やKindle読書に勤しんでいる。なので、もしiPhoneだけが文明とつながる手段に限定されてしまうと、俺にとっては牢獄中の犯罪者と変わらない状況に陥る。もちろん「膝の痛みを解消し、仕事含む日常生活に支障がないようにしたい」という第一義的目的はあるのだが、一方で入院中の過ごし方もQOLに関わる結構重要な問題なのだ。

地上波の番組表を確認。相変わらず見たいと思えるような番組が皆無だ。いつからテレビってこんなにつまらなくなったんだろう。

仕方なくBSを映してみる。
BS1でスペシャル「市民たちの不服従」がちょうど始まったところだった。ミャンマーのクーデターに尊厳を持って立ち向かい、石ころのように命を散らす人々。
衝撃的な内容だった。現代の国際社会に、こんな極端で理不尽な集団的暴力がまだ存在しえたのか、と暗澹たる気分で、1年くらい前に読んだ米澤穂信の「さよなら妖精」に出てくる魅力的な異邦の旅人マーヤを思い出し、気がつくとちょっと涙ぐんでいた。


ふと見ると、点滴の落下が止まっている。これは、いわゆるナースコール事由に相当する事象なのだろうか、それとも、大体終わる時間は把握していて、ほっといても来てくれるものなのだろうか?

腕に刺さっている細い管は既に透明な液体ではなく、少し血液の赤みを帯びた状態になっていた。
(このまましばらくほっとくと、管に乾いた血がこびり付いた感じになりそうだなー)
数分悩んで、上の写真のモニター装置にある、ナースアイコンのボタンを押した。

しばらくして、ザ・美人秘書て感じの担当看護師が全身防護状態で来てくれて、「点滴終わったらすぐ呼んでくださいねー」とのことなので、点滴終了はナースコール事由に相当するらしかった。

看護師 「後で先生から血液検査結果の説明があります」
俺   「はい」(これで症状抑える薬がもらえるのかな)

22時ごろだったか、吉高23%先生がやってきた。

吉高23% 「血液検査したらですね。胆嚢の数値がものすごく悪いです」
俺     「胆嚢ですか、、」
吉高23% 「普通は200くらいのところ、1000超えてます」
俺     「ひょえー、それはなかなかヤバい」
吉高23% 「あと、肝臓前から悪かったりしました?」
俺     「あー、お酒はあんまり飲まない(注4)んですけど、若い頃から仕事で疲れてる時期とかに検査受けると、γGTPが400超えてたりしましたね」
吉高23% 「そう、γGTP400超えてますね。このままだと肝臓だけじゃなく腎臓とかにもすごい負担かかっていろいろヤバいですよ」
俺     「なるほど、、、おしっこの量が減って茶色っぽくなったの、そのせいですかね」
吉高23% 「その可能性ありますねー」
俺     「今回は膝ですけど、足の甲とかたまに痛くなるの、痛風なのかなと思ったりしてるんですけど、尿酸値も高いです?」
吉高23% 「尿酸値もかなり高いですねえ。とにかく数値が改善するまで少し入院しましょうね。」

新型コロナの影響で在宅勤務が1年ほど続き(注5)、運動不足と炭水化物バカ喰いの繰り返しで体重が7キロくらい増えていた。そのせいで内臓脂肪が増えてるのは自覚していた。直接の原因は違うかもしれないが、はっきり数値で悪いと示されたわけで、こりゃすぐに筋トレ高タンパク低糖質お菓子断ちモードに入らんとヤバいな、と俺は決意を新たにしたのであった。

しかし運動、筋トレと言っても、まずは膝の痛みだよ、これ解消しないと生活基盤に影響しちゃう。だが今のところ、そこに関して直接原因、特効的な対策は得られていない。別に人間ドックに来たわけじゃなくて、通常の生活を取り戻すため、膝の痛みを解消するために俺はここに来ているのだ。

入院初日はこうして終わった。何はともあれ、部屋で遭難しないで良かったと前向きに捉えつつ、俺は眠りに落ちたのだった。
(続く)

注1
冨樫義博のHunter x Hunter ていう休載ばっかりで有名な漫画の28巻で、無敵の強さを誇っていた敵の半獣半人的な王様が核爆弾的なものの直撃を食らって燃えカスみたくなるシーンがある(そこから部下のエキスを吸い取って復活するんだけど)

スクリーンショット 2021-05-19 11.02.17

ちなみに、昔、一緒にフットサルの個人参加やビリヤードに行ってた友人が白金の冨樫先生んちの近所住まいで、離れの仕事部屋が撤去されてたとか、子供にサッカーコーチ雇って相手させてるらしいとか、いろいろと噂を聞いては、連載再開まだかなーって首を長くしていたものだ。

注2
ビタミンB群が豊富に含まれ、疲労回復、肩こり腰痛の解消等にも抜群に効くとされている注射。病院で頼むと打ってくれる。10年くらい前に、これ系の点滴専門店が出来て何度か行ったが、もう潰れちゃったのかな?

注3
筆者の日大のイメージは、例のアメフト部超悪質タックル事件とその後の頭悪すぎ対応などなど、パワハラ、大人のいじめ的な不祥事が多く、組織的にイケてないとこ、という感じなのであった(あくまで個人の勝手な印象です)

注4
週に1回も飲まないくらい。飲む時も主に日本酒を1、2合嗜む程度であり、酒が肝臓の数値の原因てことはまずないと思われる。

注5
もうすぐローンチする100万人以上使うと思われるスマホアプリの開発プロジェクトを、ベンダー、コンサル、発注元社員がほぼ完全にリモートでプロジェクト進行していた。物理的に顔を合わせること自体に意義があること以外は、正直リモートの方が余程効率よくプロジェクトが進む。
会議室予約、資料印刷、通勤時間、全て不要で、集中できる環境を探す必要もない。slack等のチャットツールとweb会議ツール、タスク管理ツールがあるだけで超快適、リラックスして仕事ができる。
しかし、通勤で駅の階段を上り下りすることもないため、油断すると凄まじい運動不足状態になるリスクがあるのだ。

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有料にしてるのは、個人的に尊厳が問われたりしそうな恥ずかしいとこは誰が読んだか知っときたい、くらいの軽い気持ちですんで、そのうち全部無料公開にする気がします。

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