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島 2

夜になった。火をおこす。さっき拾ったいろいろな大きさの木片が、今は火になっている。大きいの小さいの、ぐねぐねしたのまっすぐなの、木片にはいろいろあった。日中、強く照り付ける太陽のエネルギーが木に溜め込まれて、それが燃やされ、ゆらめく光を発している。上へ上へと向かうのではなくて、とぐろをまき悶え、上ったかと思えば横に広がる。その熱が私と君を温める。

 やたら暑かった。たき火にあたっていたせいもあるし、島の空気の熱さもあるし、お酒を飲んでいたせいもある。梅酒。ビール。素晴らしくおいしかった。まったく冷えていなかったが、それがかえって飲みやすかった。浸みた。ほてった私のからだは、そのまま空気にとけていってしまいそうだった。すべてが溶けて一つになる。そんな中で一つ、意志をもって動くのは君の指。

 風は相変わらず強かった。テントがゆれる。雨も入ってきた。テントのなかは汗臭かった。

 朝起きると君はもういない。ビーチ続くへ坂道を下る。海のほうを見ると、君がシュノーケルをしていた。君はきっと起きてそのまま海に入ったんだろう。裸だったから、青い海面に君のおしりが浮かんでいて、随分とまぁ、まのぬけた光景だったよ。そして浜に上がってきたきみは、裸なのにシュノーケルとマスクだけしていて、もっと間抜けだった。入れ替わりに私は海に入る。

 赤、青、白、黄色。ちらちらと色の欠片が飛ぶ。ふわふわと漂う。群れる。抜ける。それを私は上から覗き込む。

昔、よく家族旅行に南の島に行ったことを思いだした。あるときプールで泳いでいたら、視界の隅を青いなにかがすり抜ける。プールなのに、魚?はっと顔を向けても、なにもいない。しろっぽい胸から下のからだがいくつも奥の方まで続くだけ。またちらっと視界をかすめる。顔を向ける。なにもいない。なんだなんだ。きっとプールに迷い込んだルリスズメダイだ!私はその日結局、陽が沈むまでプールにもぐって、あっちむきこっちむき、青い何かをさがし続けた。陽が落ちると、水か急につめたくなる。その日はもうあきらめてプールサイドにあがり、乾いたバスタオルにくるまった。ほっとするかんじ。

 お母さんと部屋に戻って、頭につけていたゴーグルを外す。青いゴーグル。すっかり冷えていたので、バスタブにお湯を張ってまたつかる。海外のホテルの、横長の浅いバスタブ。遊び足りずにゴーグルをつけてお湯の中に飛び込む。すると、なんとまた青いなにかが見えた。そう、青いなにかは、プールに迷い込んだルリスズメダイなんかじゃなくて、ゴーグルのベルトのぴらぴらだったのだ。

 必死になって追いかけていたものが、そんなにすてきなものじゃないと気付いたとき。笑ったらいいのだろうか。泣いたらいいのだろうか。

サポート頂くと、家に緑が増えます。たぶん。