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【落語】田端の半纏

もう10年では効かない、仕事がらみの知り合いから、こんなのがヤフーオークションに出てますよ。と、教えてもらったのが、三代目桂三木助の半纏。23000円ぐらいからで、28000円が即落価格。出しているのは、主に明治大正昭和の、半纏や古着を扱っている方。数から言って、業者といってもいいだろう。

贋物…ということもないだろう。仮にそうだとしたら、なんだかの撮影に作ったものになるだろうから、時代のつき方からして、そんなことはない。

28000円と送料900円払って、すぐに落とした。

その二日後。これまた、すぐに届いた。

古い半纏としても、状態がいい。
着ることも、難なくできる状態だ。
三代目師匠が橘ノ圓が桂三木助を襲名したのが、昭和25年、1950年。
揃いの半纏を誂えるとなると、そのタイミングであろう。そう考えると、71年前のもの。

寄席文字でない、三代目三木助の字から、背中の藝紋・三木柏、三木助の三からの意匠であろう三筋が、実に小ざっぱりしている。

先代の一門の誰かが袖を通したことも、あるのだろうか?
届いて早々、羽織ってみて、ゾクゾクっときた。ザワザワっとも。

多分、こちらに売ったひとには、たいした価値がないものだったのであろう。もしくは、紛れていたのか。でも、手元にきたわたしにとっては、なんとも言葉にならないものだ。できない、でもいい。

衣紋掛けに、掛けて1日と半日。

見上げてみれば、しばし、呆っとしている。


書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。