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11.5 きょうおもったこと

ピアノを演奏する友人と話していて、言葉の持つ説得力のはなしになりました。
ことあるごとに、言葉を生業とするわたしと話すのは緊張するなんていうけれど、どうやらふたりともよく喋るようで、いつも気がつけば「電車ぎりぎりだよ」と店を出ている気がします。
そんななかで、「音楽は言葉ほど伝わらない」というはなしになったのですが、言葉を生業としてはいるものの、んん、どうだろう?とわたしは聴いていました。
伝わる言葉も、空虚な言葉も、それに言葉には嘘も、悪口雑言もあります。
ふだんの言葉に、仕事のテクニックは使ってないつもりです。つもりですが、当然自然と使ってはいるのでしょうが、意識して使うことはありません。
結局、飲みながら四時間、やはりふたりとも十分におしゃべりなようです。

少し、洋酒でも飲んでかえろうか。

と、街外れのジャズバーに入ると、ラストステージ30分前。クローズまで90分。ちょうどいい時間。
しばらくすると、自然に、本当に自然に演奏がはじまりました。まずは聴き馴染みのある、ディズニー音楽の枠を越えたナンバー『Someday My Prince Will Come いつか王子様が』から。
30分の演奏はあっという間で、ステージの前ということもあり、すっかりピアノに夢中になる友人を見ながら「説得力があるかないかはともかく、充分に雄弁だよ」と言うと、ピアノを見ながら「雄弁かぁ」と言って笑いました。
はたして、雄弁であっていたのか、能弁がよかったのか、ぴったり伝えたかったことに言葉が添っていたのか、あとから考えてしまうのは、言葉を生業とするわたしの悪いクセです。
夜、なんとなくジャズピアニスト、ビル・エヴァンスのアルバムを聴いていると『Someday My Prince Will Come』が。ふと手を止めて聴いていると、あの夜の酔い心地から、店の暗さ、友人との会話、眼差しが、そして「雄弁だよ」と言った自分の言葉が浮かんできました、そしておもいました。

うん、あのとき思ったこと、伝えたかったことには「雄弁」でよかったんだ、と。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。