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【暮らし】暑気払い

   そうやすやすと、払える暑気なんかでは、到底ない。が、暑気払い。ことのおこりは、盆暮のあいさつから。落語家わたしたちの世界では、盆暮のあいさつ──お中元にお歳暮は、前もって連絡することなく、ごあいさつに伺いました。と、突然訪ねる。そこで、いらっしゃれば、無事にあいさつは終わるのだが、いなければ再度訪ねる。以下、繰り返し。わたしも師匠をはじめ、客先など、何箇所かそうしてきて、やがて、何人か、うちにも訪ねてくるようになった。お世話とは、具体的に言えば、仕事をたのんだり、稽古をしたり、と。
   たいてい、数年行ってると、また、来てくれる場合もそうだが、うん、もう、ホント、次からいいからね。と、こうなる。で、うちに来ていた二ツ目の落語家にも、そう言おうとした矢先に、悪疫流行り。世の中の混乱は、記憶にあたらしいところだと思う。そんな世情で、たのめる仕事もないし、仕事自体がないだろうに、もう、いいよ。と、言おうとしたが、ん?待てよ?こんな時だから、落語家らしい風習ことを遺しておくか。と、彼にもそう言って、現在に至る。
   の、だが。そうしているうちに、ひとり増え、ふたり増え。去年の夏からだったか、では、来る日を言ってもらって、その代わり、暑気払いと忘年会にしようじゃないか。と、こうなった。って、こと、暑気払いに至るまでの経緯が長いな。
   それで、昨日も二ツ目がふたり、一門の色物がひとり、3人でやってきた。まぁ、たいしたことどころか、なにも、やってやることなんざないのだが、どうもどうもと挨拶を受けて、では、と、乾杯。サッポロラガー赤星の栓を抜いて乾杯したところで、カンタンにつまめる肴から。いちいち料理の写真がないので、洗って並べた器から。塗の小鉢が茗荷としらすの豆腐、右端の山水の皿とその横の小鉢が、茄子のディップにバケット、左下の高取焼の深皿が水貝。なにか刺身をと見ていたら、小さい鮑があったので、夏らしく水貝にした。
   ここで、また、わたしも席について、ああだのこうだの、皿が空いてきたところで、左上の小鹿田焼が厚切牛タンの塩焼きと甘長唐辛子。最後が、また高取焼きで、鯖缶のペンネアラビアータ。こんな、感じ。
   今年も折り返し、この顔ぶれが、暮れにはどんなはなしをしてくれるのか、それもまた、たのしみに、後半戦。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。