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【本】三世 桂三木助
三世 桂三木助(山本昌代・著 新潮社)
三代目桂三木助は神様のような存在で、
『三世桂三木助』はわたしの聖書である。
田端三木助学校と呼ばれる、三代目三木助一門は、厳しい修行として定評だった。田端で勤まれば、どこでも勤まると言われたほどで、わたしはその「勤まらなかった」クチではあるが、それでもおかみさん、おねえさん、師匠であった四代目三木助の教えはいまだに生き続いている。
本書は緻密に残された、三代目三木助の日記とおかみさん、そして、光永こと後の入船亭扇橋、若き弟子たちを中心に綴られている。
だから三世三木助でもあり、若き日の入船亭扇橋・橋本光永こと桂木久八の木久八伝であり、小林仲子伝でもある。
三代目三木助に関して言えば、盟友というか恩師というか、安藤鶴夫の『三木助歳時記』が有名であるが、この三代目三木助の残した日記を軸にしている分、当時の三代目師匠の心境、心情、その心の揺れが見てとれる。
師匠であった四代目三木助から、この日記を見せてもらったこともあるし、覗き見したこともあるが、米粒に写経するかのような繊細な字で、きっちりと書かれている。
酒に酔ったまま、夜中に書いた判読がまったくできない、わたしの日記とはエライ違いだ。と、言うだけでもおこがましい。
この三代目三木助日記は、出版の話もあったが、「日記に書かれている藝人が生きているうちはムリだよなぁ」と、生前四代目師匠はそう話していた。
そのムリな箇所も、何度も師匠から聞かされ、読ませてもらったが、これはわたしと四代目師匠、かつての師弟の内緒話である。
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