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幽霊に憑かれたアルバム―cero『e o』

ceroの5thアルバム『e o』のタイトルは、「cero」から子音を取り除き母音だけを残している。 (c)e(r)o。 「c」と「r」は見えなくなっている。けれども消滅してしまったわけではない。見ることはできないし存在はしないが、気配だけはするので存在しているかのようにも感じられる存在。『e o』はこの非現前と現前の間にある「幽霊」へとわたしたちの思考をいざなう。 1.記憶アルバムは「Epigraph」で幕を開ける。断片的な情景が淡々と描写されていく。アルバムアートワ

    • 2023年と小説について

      2023年最大の事件は、何といってもceroの5thアルバム『e o』との出会いだった。歌詞の虜になってしまい、長すぎるnoteも書いた。それをきっかけとして、小説への本格的な興味が湧いた。この一年で最も嬉しかったことだ。 * 僕は小説にあまり触れてこないで生きてきた。読みたいとは思っていたが、そもそも読書量が少なかったのもあって、ピンとくる作家やジャンルに出会えなかった。多感な時期にぜんぜん本を読まなかったことはとても勿体なかったなと今になって思う。ただ、読書感想文をは

      • 生活維持省と郵便的不安について

        星新一の『ボッコちゃん』に「生活維持省」というディストピアものがある。犯罪や交通事故、病気や自殺までもがない「平和」な世界が描かれている。ただしその平和は、政府の方針に基づき毎日ランダムに国民を「間引く」ことで維持される。そして生活維持省に勤める主人公の職務は、毎日コンピュータに選ばれた人を殺すことである。 このエピソードは、2022年にNHKでドラマ化された(主演:永山瑛太)。僕はこの映像を原作よりも先に見た。シリーズの中で最も強く印象に残っている。自分がこの世界に生きて

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