じゃりン子チエと現代社会②

2 テツとモンスターペアレント

 モンスターペアレントという言葉が日本で現れたのは、元教師の向山洋一氏が教室ツーウェイという雑誌の中で名付けた2007年である。モンスターペアレントは、不当、不可解な要求を、次々に担任、校長、学校につきつけている保護者であり、社会問題の一つでもある。

 その問題である、モンスターペアレントがじゃりン子チエの1巻の第3話「教育パパ」で現れる。この話が描かれたのは、モンスターペアレントという言葉が現れる29年前の1978年である。

 この話は、テツが偶々チエちゃんの学校で授業参観があることを知り、授業参観に行くという内容である。
 

 チエちゃんが、テツが学校に来られたことにショックを受け、テツ曰く親子の愛に目覚めた彼は、チエちゃんが授業中手を上げず当てられないことをえこひいきだと主張するのだ。とうとう、チエちゃんはテツが原因で泣くと、それを担任が原因だと言い張り、担任を脅す。


 モンスターペアレントという言葉がない当時では、恐らく極度の親ばかとして描かれていたのだろう。それから約30年後に、作中のように教師を殴ると脅すのではないが、テツのように教師に不当な要求をする保護者が現実に現れたのだ。

 モンスターペアレントが出現した原因は、80年代前後の校内暴力時代を経験し、元々教師への敬意がないことが一つ挙げられる。また、バブル景気で社会に出たため、教師を愚弄している。また、バブル崩壊後、公務員は失業などの不安がないなどの教師への嫉妬だと、教育社会学を専門とする門脇厚司氏は、指摘している。

 年代は違えど、テツもまた教師に敬意がない。テツが小学生の頃の担任、花井拳骨は、テツとヨシ江の仲人をし、また花井がテツを気に入っていることもあり、小学校を卒業して25年経つが家族ぐるみで交流がある。テツの母、菊と共に花井はテツが頭が上がらない数少ない人物として描かれている。

 小学生の頃から少年院に入るなど問題児だったテツは小学生の頃から、問題を起こす度に花井に殴られていた。その為、テツはすでに亡くなっている花井の妻を気に入っていたが、花井の妻の写真に花井が映り込んでいるものは全て処分したなどの発言から花井に対するテツの恨みは相当なものだろう。それは、未だに問題を起こす度に暴力を受け、仕事を押し付けれたり、妻ヨシ江についてからかわれるということが原因なのかもしれない。

 チエちゃんの事を気に入っていることや昔からある教師、主に花井への恨みがチエの担任で弱々しい花井渉に向かったのであろう。この第三話以降、渉がテツ恐喝されることがなかったのは、恐らく渉が花井の息子であることを知ったからであろう。また、渉はテツが自信喪失した時などの話相手などをしている為、ある程度信頼しているからである。

じゃりン子チエと現代社会③

に続く

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