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急性腰痛はこんな病態

急性腰痛はこんな病態
腰痛には明確な定義はないのですが、一般的には「一番下のあばら骨とお尻の間に起きる痛み」となっています。
その中でも、発症してから4週間未満のものが急性腰痛と定義されています。突然腰が痛くなる、いわゆる「ぎっくり腰」もこの中に含まれます。なお、発症から3カ月以上のものは慢性腰痛、急性と慢性の間は亜急性腰痛と呼びます。
腰痛の原因は椎間関節性、筋・筋膜性、椎間板性、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、仙腸関節(せんちょうかんせつ)性の順に多いという報告があります。

急性腰痛の症状
いわゆる腰の痛み全般で、「魔女の一刺し」などともいわれ、ちょっとしたことで激痛が起きて動けなくなることもあります。
腹部に痛みが響いたり、下肢にしびれ、痛みがある場合は注意が必要です。

急性腰痛の検査・診断
腰痛はがんの転移や感染、骨折、内臓の病気など、重大な状態が隠れていることがあります。以下の項目(危険信号)が当てはまる場合は要注意といわれています。
・20歳以下または55歳以上・時間や活動性に関係のない腰痛・胸部痛・がん、ステロイド治療、エイズ感染の病歴・栄養不良・体重減少・広範囲に及ぶ神経症状(主に下肢のしびれや痛み、脱力、排尿排便感覚などの異常) ・構築性脊柱変形(姿勢が悪いのと違い、本人が気を付けてもまっすぐにならない状態) ・発熱
上記9項目に当てはまらなければ、必ずしもX線などの検査は必須ではないといわれています。危険信号がある場合や神経症状を合併している場合は、MRI検査が有用であるとされています。

急性腰痛の治療法
腰痛の多くは1カ月程度で急速に改善するといわれています。しかし約6割は1年経っても腰痛が残り、さらにそのうちの約6割の人は腰痛の再発を経験するとのことです。
安静は必ずしも有効な治療法ではないとされています。痛みに応じた活動性の維持は、疼痛を軽減し機能を回復させるのに有効だったとのことです。
薬物療法については、単純に痛み止めではなく、いろいろな薬が出てきており、選択の幅が広がっています。
急性腰痛では、非ステロイド性抗炎症薬・筋弛緩薬、アセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)、弱オピオイド(鎮痛剤)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(鎮痛剤)の順で推奨されています。
今のところ、温熱療法、経皮的電気刺激療法(TENS=電極を貼って電流を流す治療法)、牽引療法、コルセット、超音波療法は推奨するには十分な証拠がありません。ただ、有害なわけでもないため、患者さんごとに合うものを施行していくのがよいと考えられます。
運動療法は慢性腰痛には効果が高いといわれていますが、急性腰痛には効果がないとされています。
急性腰痛に対して、椎間関節への注射や、脊髄後枝内側枝(せきずいこうしないそくし)ブロックは有効です。ブロックとは、関節や神経に局所麻酔薬を注射し、痛みの伝わる経路を遮断することで痛みを取り除く治療法です。また、神経根性痛(神経根の圧迫によって起こる疼痛)に対して、腰椎硬膜外ブロックや、神経根ブロックは、短い間ですが効き目があるといわれています。

急性腰痛予防の基礎知識
急激な痛みなので、症状ですぐに分かりますが、重症度に関しては「急性腰痛の検査・診断」で記した危険信号の有無を確認することが重要です。
腰痛の予防には運動療法が有効であるとされ、コルセットについては予防効果はないとされています。
腰痛の危険因子としては、運動不足や喫煙が挙げられます。また、痩せや肥満も腰痛の弱いリスクになっており、体重コントロールが重要になります。身体だけでなく精神的要因、特にうつ状態も関与しているようです。
腰痛の原因として仕事内容との相関関係も挙げられます。具体的には運輸、清掃、介護、看護などの職業で腰痛を持つ人が多くなっています。さらに職場でのストレスは、腰痛の発症とその治り具合に影響するようです。業務内容に起因する職業性腰痛の場合、腰痛発症後も仕事内容の変更などで早期に復職することで、腰痛の長引きや身体障害を予防でき、病休の長期化を防ぐといわれています。


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