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解離性障害はこんな病気

解離性障害はこんな病気
解離とは、意識や記憶などに関する感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。この状態では、意識、記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが分断されて感じられます。例えば、特定の場面や時間の記憶が抜け落ちたり(健忘=けんぼう)、過酷な記憶や感情が突然目の前の現実のようによみがえって体験したり(フラッシュバック)、自分の身体から抜け出して離れた場所から自分の身体を見ている感じに陥ったり(体外離脱体験)します。こうした症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。
解離の病態メカニズムは、いまだ十分に解明されていませんが、病気の成り立ちには、ストレスや心的外傷が関係していると考えられています。心的外傷としては、災害、事故、暴行などの一過性のものもあれば、性的虐待、長期にわたる監禁状態や戦闘体験など慢性的に何度も繰り返されてきたものもあります。人はこのようなつらい体験によるダメージを避けるため、一種の防衛反応(切り離し)を起こし、精神機能の一部を停止させたり自己を切り離したりすることがあります。これが解離性障害につながっている可能性があります。

解離性障害の症状
代表的な症状として以下があります。
(1) 解離性健忘
ある心的ストレスをきっかけに出来事の記憶をなくし、ほとんどが数日のうちに記憶が戻りますが、ときには長期にわたって健忘が持続する場合があります。
(2) 解離性遁走(とんそう)
自分が誰かという感覚(アイデンティティ)が失われ、失踪して新たな生活を始めていたりします。学校や職場において極度のストレスにさらされ、しかもそれを誰にも打ち明けることができない状態で突然不在となり、自分の行動についての記憶を失っていることが通常です。
(3) 解離性同一性障害
自分の中にいくつもの人格が現れる状態のことで、ある人格が現れているときには、別の人格についての記憶がないことが多く、生活面でさまざまな支障が生じます。
慢性的な発達上の外傷体験と関連していると考えられ、複雑型PTSD(性的虐待や家庭内暴力など慢性的な状況が原因で生じる心的外傷後ストレス障害)との関連が深いです。米国では、解離性同一性障害の人の約80~90%が性的虐待、約70%が身体的虐待を受けていたという報告があります。
(4) 離人症
自分が自分であるという感覚が障害され、あたかも自分を外から眺めているように感じる曖昧な状態です。自己が分離し二重化しているために生じる現象だといわれています。


実際にみられる解離性障害の半数は上記のようにきちんと分類されず、より特定できないタイプが多いようです。

解離性障害の診断
解離症状があることに気づいていない患者さんも少なくなく、さらに幻聴などの症状を抱えていることもあります。したがって、統合失調症との鑑別が必要になるなど診断が難しいときがあります。また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不安障害、うつ病、境界性パーソナリティ障害(感情や対人関係の不安定さから生活に支障をきたす状態)、摂食障害、物質使用障害(アルコールや薬物などの物質を過度に使用し、依存している状態)、強迫性障害など他の精神疾患の併存も多くみられます。

解離性障害早期発見のポイント
解離症状がみられる人に気づいて、専門医を受診するように周囲から勧めることが重要です。また、併存している精神疾患の相談や治療をしていく中で、解離性障害を発症していることが明らかになる場合や、事件・事故が起きた際に診察が必要となり、解離性障害を発見することもあります。

解離性障害予防の基礎知識
治療の基本は、安心できる治療環境を整えること、ご家族など周囲の人が病気について理解することで、主治医との信頼関係が支えとして大切です。なぜなら、解離されている心の部分は、安心できる関係性の中でしか表現されないからです。また、医師や看護師などの治療者が解離性障害一般について十分な知識を持ち、患者さんやご家族に積極的に情報を提供し恊同していくことも重要です。解離性障害の患者さんのほとんどは、自らの症状を信用してもらえない、演技と思われてしまうという問題を抱え、そのストレスが解離症状を悪化させる要因となります。さらには、解離症状があることを本人が理解できていない場合もあります。人格の統合や心的外傷への直面化(心的外傷に対して正面から向き合うこと)にはあまりこだわらず支持的に、かつ希望を持てるように接することが大切です。 薬物療法については、症状の内容や程度に合わせて適宜処方されます。



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