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筋萎縮性側索硬化症はこんな病気

筋萎縮性側索硬化症はこんな病気
運動の命令を伝える神経(運動ニューロン)は、脳から脊髄を介して筋肉を支配しています。筋萎縮性側索硬化症はこの運動ニューロンがダメージを受けることで筋肉が少しずつ痩せ、手足を動かすことが困難となり、全身の麻痺に至ります。さらに舌、呼吸筋や咽頭・喉頭部の筋群も侵され、会話、物の飲み込み、呼吸も次第に不可能になっていく進行性の病気です。脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症など類縁の病気をまとめて運動ニューロン疾患と呼ぶこともあります。
根本的な原因はまだ不明です。しかし、神経の変性していく過程に、ある種のたんぱく質がかかわっていることが最近わかってきて、急速に研究の進んでいる分野の一つです。ごく一部では、家族内で同じ病気が発症する場合もあります。病気がかなり進んでも、目の動きや体の感覚、膀胱直腸など自律神経系には症状が出ないとされています。
診断には脳神経内科医による神経学的診察に加え、他の類似した病気との鑑別のために、脳や脊髄を中心としたMRIなどの画像検査、神経の伝わり方や筋肉の機能を調べる筋電図などの生理学的検査が行われることが多いです。

筋萎縮性側索硬化症早期発見のポイント
発症年齢は中年期(40~50歳)以後に多いとされます。手足の左右いずれかから、ゆっくりと症状が出てくることが多く、他の脳神経内科の病気や、場合によっては整形外科等の病気に酷似することもあります。
2~3年経過すると筋肉の痩せが目立ち、さらに力が入らなくなるなどの症状が目立ってきます。横隔膜などの呼吸をつかさどる筋肉が障害されると呼吸不全に至り、口や喉の筋肉が侵されると、発声や物の飲み込みが困難になります。これら症状の出現の順番や組み合わせのパターンは様々です。

筋萎縮性側索硬化症予防の基礎知識
はっきりした予防の方法はまだわかっていません。遺伝的背景で発症する場合は小児期から発症することがありますが、典型的な筋委縮性側索硬化症とは若干異なる症状を呈することが多いようです。
現在では症状を軽減し、進行を少しでも遅らせるための内服薬や注射薬が出てきて、一世代前の状況とは大いに異なります。しかし、現時点で病気を根本的に治療するにはまだ不十分で、研究が進行中です。

筋委縮性側索硬化症の予後
咽頭の筋力低下で物の飲み込みが困難になった場合は、栄養不足を防ぐために、胃瘻(腹壁を切開して胃内に管を通し、食物や水分、医薬品を投与するための処置)をはじめ何らかの無理のない栄養管理が重要になります。呼吸困難がある場合は、非侵襲的な(生体を傷つけないような)呼吸管理を行い、日常生活における生活の質を少しでも維持することを心がけます。
約半数近くに認知症の一つのタイプ「前頭側頭葉変性症」が合併することが近年明らかになりました。自発的な言葉の低下や無為、無気力などの症状を呈したり、行動障害として非協力的、周囲への無配慮、相手や自分に対して抑制が効かなくなる、合理的とは思えないことに強く固執した言動を繰り返す等があり、介護に困難が伴うこともあります。
上記で述べた、栄養や非侵襲的呼吸管理がいよいよ困難となったときは、さらに気管切開をして人工呼吸器を永続的に装着するかどうかを選択するだけではなく、多様な面から予後の厳しさも併行して考えていく必要があります。患者さんご本人や家族だけが抱えて悩むのではなく、医師や看護師、リハビリテーションスタッフ、薬剤師をはじめ介護・福祉スタッフ、保健師、ケースワーカー等多くの専門職との協働が大切です。





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