見出し画像

100文字ドラマ裏話

好きだと気づいた時にはもう遅くて
遠慮した自分が嫌いになる
望んだように上手くは行かないから
見えないように、見ないように
そっと蓋をした
懐かしくて、青くて淡い記憶
潮の匂いがする窓辺でひとり迎える
乾いた朝。


これが100文字ドラマの内容。

思春期によくある失恋がテーマで、体験を元にしたフィクションってとこ。

_____________________

高校1年生の夏頃。

広い背中に綺麗な横顔。水泳で鍛えられた筋肉。

私がすきになったU君はそんな人だった。

特別クラスで人気者では無い彼と、席替えで前後になったことから仲良くなった。

「あ、U君が好きやな…」ってすぐに思った。

気持ちを伝える勇気はもちろんなくて、ただ後ろから彼の背中を眺めるだけ。それだけで幸せだった。


ある日の昼休み。

一緒にご飯を食べてた子が、U君が好きだと私に言った。「ひろみも前かっこいいって言ってたよね?」探るように聞かれる。

私はかぶりを振って「今はそんなに」と返した。

本当はU君の事が好きだったけど、その子に勝てる気がしなかった。

英語ができて可愛くて、スタイルも良くて皆にも慕われてる。そんな子に私が勝てるわけない。

「私ね、U君のあの広い背中と横顔が大好き。前までうるさい男子としか思ってなかったけど、話すとめちゃくちゃ紳士でさ…」その子はU君を眺めながら言う。

私はずっと前からすき。仲良くなったのも私の方が早かった。U君が紳士なのは、お父さんが単身赴任で苦労してるから。あなたはそんなこと知らないでしょ。

次々とモヤモヤした感情が湧いてきた。


…結局、U君とその子は付き合った。

U君と喧嘩して別れないかな。そんなことを願ったけど、そう上手くは行かない。

2人が付き合ったことを知ったその日は、4階の教室に珍しく潮の匂いが届いていた。

_____________________

というのが私の実体験であり、100文字ドラマ裏話。コンテストが終わって随分時間が経ったけど、やっとまとめられたから公開する。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?