100文字ドラマ裏話
好きだと気づいた時にはもう遅くて
遠慮した自分が嫌いになる
望んだように上手くは行かないから
見えないように、見ないように
そっと蓋をした
懐かしくて、青くて淡い記憶
潮の匂いがする窓辺でひとり迎える
乾いた朝。
これが100文字ドラマの内容。
思春期によくある失恋がテーマで、体験を元にしたフィクションってとこ。
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高校1年生の夏頃。
広い背中に綺麗な横顔。水泳で鍛えられた筋肉。
私がすきになったU君はそんな人だった。
特別クラスで人気者では無い彼と、席替えで前後になったことから仲良くなった。
「あ、U君が好きやな…」ってすぐに思った。
気持ちを伝える勇気はもちろんなくて、ただ後ろから彼の背中を眺めるだけ。それだけで幸せだった。
ある日の昼休み。
一緒にご飯を食べてた子が、U君が好きだと私に言った。「ひろみも前かっこいいって言ってたよね?」探るように聞かれる。
私はかぶりを振って「今はそんなに」と返した。
本当はU君の事が好きだったけど、その子に勝てる気がしなかった。
英語ができて可愛くて、スタイルも良くて皆にも慕われてる。そんな子に私が勝てるわけない。
「私ね、U君のあの広い背中と横顔が大好き。前までうるさい男子としか思ってなかったけど、話すとめちゃくちゃ紳士でさ…」その子はU君を眺めながら言う。
私はずっと前からすき。仲良くなったのも私の方が早かった。U君が紳士なのは、お父さんが単身赴任で苦労してるから。あなたはそんなこと知らないでしょ。
次々とモヤモヤした感情が湧いてきた。
…結局、U君とその子は付き合った。
U君と喧嘩して別れないかな。そんなことを願ったけど、そう上手くは行かない。
2人が付き合ったことを知ったその日は、4階の教室に珍しく潮の匂いが届いていた。
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というのが私の実体験であり、100文字ドラマ裏話。コンテストが終わって随分時間が経ったけど、やっとまとめられたから公開する。
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