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頚部痛に関する胸鎖乳突筋の代償動作の評価

頚部痛の介入において胸鎖乳突筋は簡易的な目安になると考えられます。

その理由は深層屈筋の代償として屈伸運動に関わると考えられるからです。

頚部痛患者の中でも屈伸時の痛みは頚部深層筋の促通不良や頭板状筋の伸張性収縮不良が影響するとも言われています。

これにより屈筋群の筋力低下を招き、下向き姿勢や前頭姿勢で頭部の支持が安定しないために痛みを助長しやすくなります。

胸鎖乳突筋は胸骨ー鎖骨と側頭部の乳様突起に起始・停止を持つため両側が収縮すると頭部~上位頚椎の伸展または下位頚椎の屈曲、片側収縮で回旋(対側)、側屈(同側)します。

胸鎖乳突筋は頭の位置を安定させたり、頭の向きを変えるというのが主な働きなのですが、首の痛みはそれを損ねます。

胸鎖乳突筋は自律神経の作用も受ける

胸鎖乳突筋が面白いのは副神経という脳神経の支配を受けていることです。迷走神経という自律神経を司る脳神経の飾りのような役割を持ち、迷走神経と共に副交感神経系の一部を担います。

そのため、生活習慣の乱れや過度な緊張、長期間におよぶストレスなどが起こると胸鎖乳突筋は同様に副神経支配を受ける僧帽筋と共に過緊張します。

作用のところで「頭の向きを変える」と書きましたが、胸鎖乳突筋による頭の方向変換は意志というよりはもっと生物的で生理的な“反応”によるものに近い運動です。

獲物や生殖の相手を探すような、きれいな女性を見ると振り返ってしまう…そういう“反応”的な動きだったりします。

よって胸鎖乳突筋の過度な緊張は睡眠不足やストレスなどの影響もあり、その人の背景もよく想像して理解を示すことも念頭に置くと良いです。

頚部痛の背景にある胸鎖乳突筋の過収縮

頚部痛は腰痛と並び慢性筋骨格痛の代表格です。

一年罹患率は15%、生涯のうちで頚部痛の経験をするのは50%とも言われています。

しかも、心理社会的要因も高いためマッサージやストレッチなどが気休めにしかならない場合も多く、治療効果が高いとは言いにくいものですが、中でも運動療法に関しては一定の効果が報告されています。

頚部痛を起こす要因の中に
デスクワークによる前頭姿勢や胸椎の後弯の増大など頚胸部の運動連鎖機能低下、慢性的な肩こりの有無などが背景に潜んでいます。

不良姿勢や脊柱のマルアライメントによる胸鎖乳突筋の過収縮は共に頭板状筋、大胸筋なども筋膜連結しているため、前後の筋張力を保ちにくくなり、下行性、または上行性の運動連鎖機能にも影響がでます。

胸鎖乳突筋は静止直立時は頭部の安定が主な機能ですが、姿勢不良や運動制限に痛みが加わることで頭部の支持機能に影響します。

動作においては

頚部痛のある方は屈伸動作で痛みに対する恐怖や反応のため、深層屈筋の筋力低下や機能低下が見受けられます。

この運動の代償動作として胸鎖乳突筋の過収縮が起こります。

頚部痛の簡易評価(深層屈筋機能低下)

①患者を仰臥位にし、頭部に立ちます

②頭部を優しく持ち、軽く屈曲させながら胸鎖乳突筋を確認します

③患者に頭部を持ち上げるように伝え、胸鎖乳突筋の収縮を確認します

④胸鎖乳突筋を軽く抑え、屈曲できるかを確認します

⑤過度な筋収縮、または抑えた時に屈曲できないなどであれば深部屈筋の機能を改善するための運動を処方します


おすすめ運動療法

【1】顎引きエクササイズ(上位頚椎屈曲運動)

【2】ストレッチポールによる頚胸部運動連鎖トレーニング

【3】forehead push(うなづき運動)

【4】クロスエクステンション

ポイント

・リラックスしてもらうために深呼吸(6秒呼気、6秒吸気)

・頚椎アライメントを触察し、頭頚部の可動制限を把握できると
筋硬結、抵抗からイメージしやすくなります

・胸鎖乳突筋は圧痛点も多いため、強く押さない

・頸動脈や喉を圧迫しないように軽く抑える

まとめ

◇頚部痛による屈曲制限は深部屈筋の機能低下がおこる

◇深部屈筋の機能低下の代償動作として胸鎖乳突筋の過収縮が見られる

◇運動療法による姿勢指導、運動連鎖の改善を目的に訓練する



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