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シェアサロン経営のはじめかた 【その5.】 nuuのブランドポジショニング戦略

前回の続き。

差別化戦略において、nuuが訴求すべき価値は「場所」ではないのではないか?
そんな仮説を立ててみた。

だとしたら何を提供価値として定義すべきだろうか。


経営コンサルタントの山口周氏が提唱したマトリクスでこんな2×2がある。



縦軸に役に立つ・立たない、横軸に意味が弱い・強いの2軸。
これだけだと何のことやらさっぱりわからないので実存する企業でポジションを置いてみよう。


車業界の例



この2×2上でトヨタや日産は「意味が弱く」「役に立つ」ジャンルに属している。
一方メルセデスやBMWは「意味が強く」「役に立つ」ジャンルに存在している。
これはどういうことか?

「役に立つ」=機能性が高い
「意味が強い」=情緒的(感情的)価値が高い

ということだ。

トヨタや日産は世界最高水準の性能を持つ車を大衆向けに販売しているが、高級車というイメージはない。大衆向けである。
逆にメルセデスやBMWは高級車というイメージが強い。しかし機能はトヨタや日産とさほど変わらない。

性能がほとんど変わらないのであれば、つまるところ「高級車」であるというイメージの正体は、メルセデスのロゴ、世界観、エクステリアから発せられる受け手への「知覚」である。

ランボルギーニやロールスロイスは「意味が強く」「役に立たない」ジャンルに属している。
ランボルギーニの性能はサーキットで真価を発揮するものだ。
日本の公道で300kmは出さない(出せない)し、乗れる人数も限られ、音もうるさい。またメンテナンスにも多額の費用がかかる。
ロールスロイスにおいてはそもそも自分で運転しない。そしてデカい。運転手を雇う前提だ。だから普段使いでは役に立たない。

しかし両方とも所有しているという情緒的意味がとんでもなく強い。
だからBMWのオーナーとかランボルギーニのオーナーとか言ったりする。
しかし日産マーチのオーナーと言うことはあまり聞かない。
マーチは役に立つが、所有しているという情緒的価値は低いからである。

このことは価格にも明確に表れている。


価格帯

役に立たなくて意味が強いものに数千万〜数億の値が付く。
これは合理的な資本主義市場で考えると逆説的なようであるが、実際に成立している事実である。

この2×2から読み取れることは、発達したマーケットにおいて性能差は差別化戦略とはなり得ず、どう「知覚」されるかが重要であるということだ。

大衆車と言えばトヨタや日産であり、高級車といえばメルセデス、BMW。
最高級車はランボルギーニでありロールスロイス。

牛丼屋は世の中にたくさんあるが「うまい、はやい、やすい」といえば吉野家であり、結果を出させるパーソナルジムが数多あれど「結果にコミットする」といえばライザップである。

旨くて早くて安い牛丼=吉野家という知覚。
結果にコミットしてくれるパーソナルジム=ライザップという知覚。

つまり、そのジャンルの中で第一想起として思い起こしてもらうための活動全てがブランド構築ということになる。

同様のことをシェアサロンに置き換えるとどうだろうか?
歩合還元率はどこも同じくらい、プランも似たようなもの。
基本的に役に立つ。

ということは、他社との違いを生み出すためのポジション取りは「意味を強めること」のみにおいてしか達成不可能。

山口氏の2×2を参照し、私はここに差別化戦略のコアがあると結論づけた。



さて、向かうべき方向性は何となく見えてきた。
ここからは具体的な戦略や実行に落とし込むフェーズである。

シェアサロンにおいて場所を提供すること。これは機能的要素であり役に立つこと。つまり意味はない。
では意味が強いこと。これは何に該当するだろうか?

ここで私は女性専用というコンセプトがカギになることに気付く。

結婚、出産、育児、体調不良、etc… ×「仕事」

社会進出が進んだとはいえ、結婚を機に、出産を機に、キャリアを諦める(諦めざるを得ない)ケースも少なくない。

不満・不安・不便・不快・不都合。さまざまな不条理のイライラと人生の大部分に渡って伴走させられているのだ。

この国において「仕事とはこうあるべき」という社会的通念が未だ色濃く支配している。
「結婚」vs「仕事」
「出産」vs「仕事」
「育児」vs「仕事」
〇〇  vs「仕事」の対立構造が元凶である。
それら呪縛を解放し、思い込みを塗り替えていけないだろうか。

nuuであれば拘束時間はなく、自分のペースで働ける。
それぞれの売上、ライフスタイルに合わせた様々なプランもある。

シェアサロンというジャンルには、長らく続いた「仕事とプライベート」「雇用するものとされるもの」「時間と制約」さまざまな2つの対立構造を解体し、美容師の働き方を再定義できる可能性があるのではないか。

仕事=フルコミットするもの、という「知覚」が社会の共通認識としてある。しかし、その感覚はすでに時代遅れすぎる。

どのタイミング、どの場面、どのライフステージでもちょうどよく働けること。

「働く」ということを「場所」や「仕事」と接続するのではなく、生活の一部としてゆるやかに繋げていけたら。

=【わたしたちが提供したいのは場所ではなくライフスタイル】

これがnuuが提供すべき価値であると定めた。
そしてこの思想にクリエイティブを乗せてブランド構築していくことにした。


目指すべきボジション


提供すべき本質が決まったことで、訴えるべき内容はより明確になっていく。


つづく

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