薄氷を踏みぬく | ヒマラヤをうろうろと 6
嗚呼、やってしまった。
胸下まで浸かったと同時に、下半身に急激な冷たさが。次いで感覚が一瞬にして遠くなってきます。まずい、とにかく上がらないと。
急いで周囲の氷に手を伸ばしますが、氷は割れていて安定しません。浮いている氷を手繰り寄せて、なんとか氷河上に戻りながらヒーヒー言っていると、シェルパのドミさんが急いで荷物を持ってきてくれました。彼も腰下まで濡れてびしょびしょになっています。
「寒いよ」
ドミさんは一言,私に向かって言いました。
***
5月、春のヒマラヤ。