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「コロナ」と無能な人間

 この話はフィクションであり、登場する人物、事柄はすべて架空のものとして聞いてほしい。私が自宅で密かに映像を作るようになったのは、やはり新型コロナの影響だ。私の本業はイベント制作。とても刺激があり、充実していて、毎晩、残業の日々。給料もそこそこに良い。しかし、この新型コロナの影響で主催するイベントが次々と中止になり、すべてが無くなった。しばらくの休業を経て、定時帰宅の毎日。それに伴い給料も約半分に減った。食欲旺盛の育ち盛りの受験生がいる家庭にとっては大きな痛手だ。定時に帰るとこんなに給料安いんだ!っと今までの仕事人生を振り返ってしまった。それと同時にこんなに時間があったんだ、と思った。

 もともと学生の頃よりデザインやクリエイティブ関係の職を目指し、広告を扱う職場にも就職し、ディレクターもやっていた。この歳になって、ふと立ち止まったとき、自分はやっぱり何かを「作る」ことがしたいと思った。「作る」ことは辛いこともたくさんあるけれど、その分何ごとにも代えがたい喜びがある。

 妻は給料が減り、部屋に篭ってパソコンに向かう自分を蔑んで見ている。妻にしてみれば、パソコンでゲームをしているのと同じに見える。なぜなら今私がやっていることは、お金にならないからだ。ならば会社で何もしなくてもいいから、無理にでも残業したフリをして、いままでと同じような給料を貰って来てよ!と。心の中で叫んでいるのがハッキリと聞こえる。

妻は何も生み出さない、ただの無能な人間をみる目つきで私を見る。でも、いつか分かってくれればいいと思う。私はそんな今を耐えて生きている。何かを「作る」ために。何度も言うが、この話はフィクションだ。

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