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ウイルス性胃腸炎について(嘔吐を起こす危ない病気との鑑別他)

Take Home Message

◻︎ノロウイルス、ロタウイルスなどがある
◻︎頻回の嘔吐→下痢症状の順番に起こることが多いお腹の風邪
◻︎ウイルスの種類特定は治療方針・集団生活復帰を決める上で重要ではない
◻︎ウイルス性胃腸炎に特効薬はなく、こまめに水分を取ることが大事
 (水分摂取の方法はここからチェック
◻︎嘔吐を起こす怖い病気とは異なる

ウイルス性胃腸炎ってなに?

 胃腸炎の中では細菌によるものとウイルスによるものの2種類があります。細菌によるものの場合はほとんどが食中毒です。そのため、お子さんの胃腸炎のほとんどがウイルスによるものと考えられます。風邪と一緒で原因のウイルスは多くの種類がありますが、代表的なものにノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあります。ウイルスの種類によって経過や便の正常などは若干異なります。2歳以下のお子さんがかかりやすく、通常は11月から3月の冬季に流行します


どんな症状が出るの?

 繰り返す嘔吐、下痢の順番に症状が出現することが多く、嘔吐のピークは半日から1−2日程度のことが多いです。それ以上、嘔吐が続く場合には他の疾患も考えなくてはいけません。ロタウイルスの場合には白色の酸味がかかった匂いのする下痢便が出ることが多く、ノロウイルスの場合には、腹痛も伴うことが多いです。

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検査や診断は?

 頻度の多いノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスの場合には便を使用した迅速検査で診断をすることができますが、診断をする意義はあまり高くありません。基本的にはどのウイルスに感染したとしても治療方法が変わることはなく、お子さんのホームケアの方法も変わりません。お子さんたちが無駄な検査を受けて不快な思いをしたり、検査のためだけに医療機関を受診する必要はないのです。
 「保育園でウイルスの種類を特定してくるように言われてしまった…」など、お困りの場合は「ウイルスの種類を特定する必要はなく、特定できるウイルスもかぎられている」という当クリニックの方針を伝えてくださっても大丈夫です。保育園の先生方は、周りのお子さんにうつるかどうかが心配なのだと思います。しかし、どんなウイルスに伴う胃腸炎であっても、感染性はあるので、ウイルスの種類を特定することが大事なのではなく、しっかりした感染予防策を考えることの方が大事です。


どうやって治療するの?

 特効薬がないため、対処療法が中心です。ウイルス性胃腸炎の場合には、脱水の予防が一番大事です。お子さんが脱水かどうかは、下痢の回数、量、嘔吐の回数、水分の量、尿の回数などの情報を伺い、診察の所見と合わせて判断をします。普段の体重からどの程度減っているかで脱水の程度の判断もできますので、普段から体重を測る習慣を持つといいです。脱水の水分の取り方に関してはこちらを参照してください。


胃腸炎関連痙攣について

 ウイルス性胃腸炎にともなって、お子さんが痙攣を繰り返すことがあります。これが胃腸炎関連けいれんです。原因はいまだにわかってはいません。けいれんは多くの場合、6か月~4歳の乳幼児に起こり、大人ではこの病態を引き起こすことはありません。ウイルス性胃腸炎に伴うけいれんは、胃腸炎を発症している期間に引き起こされます。一般的には胃腸炎を発症してから1~5病日で、主に発症から数日してけいれんがあらわれるケースが多いですが、早い場合では胃腸炎を発症したその日からけいれんがあらわれるケースもあります。けいれんの持続時間は1~3分程度と短く、繰り返し発生することが特徴です。なかには1時間に数回のペースでけいれんがあらわれることもあります。適切なお薬を飲むことで治療ができるので、焦らずに医療機関を受診してください

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嘔吐を起こす危ない病気との鑑別

(1) 腸重積
 6か月から2歳が最も起こりやすく、6歳以上は少なくなります。嘔吐、腹痛(乳児では不機嫌、激しい泣き方、血便)の3つの症状を起こすことが特徴的です。しかし、最初から3つが揃っているのは10-50%程度なので、この年齢の嘔吐の子さんたちは注意深く経過観察が必要です。イチゴジャムのような血便が出たときはもちろんですが、「なんとなく元気がない」「泣いてばかりいる」「活気がない」などといった場合は遠慮なく相談してください。

(2)心筋炎
 主な原因ウイルスはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、アデノウイルスなどですが、その他多くのウイルスが心筋炎を起こします。夏に発生する胃腸炎の場合に注意が必要なことが多いです。大人の場合に不整脈や、心臓の雑音を起こすこともありますが、お子さんの場合にはこのような症状を認めないことも多く、経過するうちにいつものかぜや嘔吐下痢症などより重症感があり、何かおかしいと感じます。胸痛、動悸などは小さな子どもは訴えられないため、「何かおかしい」「顔色が悪い」「活気がない」という印象はこの病気を見つけるうえで非常に大切です。そのため普段からお子さんをよく観察するようにして、何かある場合にはクリニックで相談してくださいね。

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