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うつと体重の悩みについて

■精神症状に伴う体重の変化

抗うつ薬を服用されている方の中には、以前よりも体重が増えたと訴える方が少なくありません。これは必ずしも抗うつ薬の作用により影響とは言い切れません。今回の記事でお伝えしたいのは『体重増加はあなたが回復する過程に入ったサインかもしれない』ということと『体重増加をきっかけにさらに回復するために』という内容になります。ダイエットのススメとか、抗うつ薬は太りやすいんだ、ということをお伝えしたいわけではありませんのであらかじめご理解いただいた上でご査読いただければ幸いです。

■発症から回復の過程には必ず体重変動がある

まず前提として抑うつ症状があらわれると、食欲がなくなります。箸さえも重たい、食事を口に運ぶのもおっくう。2、3口口に運んだらもう疲れてしまう。そんな経験が私自身にもありました。健康な時には気にもしなかったことですが、食べるのって結構体力必要なんですよね。噛むにも消化するにもエネルギーが必要。

この時期、必然的に体重が大幅に減少傾向になります。食事量そのものが減るからです。食事量が減るということは、回復に必要なエネルギーも摂取できないのでこれ自体があまり良いサインとは言えないのですが、そうは言っても食べる気が起きないのがこの時期の特徴。

こうなると次は、体の方も自分を守るために「省エネ」をし始めます。極力動きたくない、意欲も省エネ。一方で少ないカロリーでも生き延びられるように、体自体の新陳代謝も低下させて調整します。一般的に「無理な食事制限ダイエットをするとリバウンドしやすい」といわれるのと同じ原理が働くのです。食べない時期が続くと体は少ない量の食事でも効率的にエネルギーを摂取しようとする、そこへきて我慢の限界から食べ始めると同じ量を食べても太りやすくなる、という飢餓モードです。抑うつ症状の見られる方は、この後しばらくこの飢餓モードが続きます。

治療を始め、お薬が処方されて効いてくると徐々に食欲が回復してきます。しかしまだまだ意欲の回復には至りません。体はまず、生命維持のために必要なことから始める。だからまず生きるために食欲から回復します。この時、体の中では次のような事が起きています。

・効率的なエネルギー摂取のために飢餓モードが続く

・まだ動く意欲は湧かないので日中の活動量は低下したまま

つまり、栄養摂取はたくさんしようとするけどカロリー消費はほとんどしない状態。多くの方はこの時期に体重増加が起こります。もちろん体重増加にショックを感じられる方も少なくないでしょう。でも、これが心と体の回復には必要な過程なのです。体の仕組みから、この体重増加の過程を経なければ健康的に活動できる状態にまで回復しえないものなのです。あなたのせい、ではなくあなたを守るために体が頑張っている結果、体重が増加する。

■体重増加が落ち着いてきたら

体重増加がずっと起き続けるかというと、そうではありません。体に必要なエネルギーを摂取できるようになれば、飢餓モードは徐々に解除され、栄養摂取も元のように戻っていきます。体重増加も徐々に頭打ちになってきます。

この頃になると、「じっとしているのが嫌になる」「ちょっと動きたくなる」という気持ちが現れるかもしれません。一方で、体重増加から重たくなった体を動かすのがちょっとおっくうになる、一つ一つの挙動がめんどくさく感じられるかもしれません。何故なら筋肉量が低下しているからです。

最初の食欲が湧かず体重減少が起きた時期、筋肉も減っています。回復に必要なカロリーを摂取していなかったからですね。そして体重は元に戻るか、それ以上になっています。増えたのは、体脂肪です。

脂肪が増えたのに筋肉は減っている、体は重たくなったのにそれを動かすのに必要な筋力は弱っている。だから体を動かすのがおっくうに感じたり、体が以前よりも重たく感じるのも自然な流れです。

さて、この時期にどうすれば最も効果的に回復が期待できるか。答えはシンプルです。

有酸素運動

少しずつ筋肉をつける、そのために体を動かす。体を動かすことで脳が刺激され、意欲が回復していきます。まずはラジオ体操程度の軽い運動から。徐々にウォーキング、ランニング、サイクリングや水泳・・・と負荷を上げていきます。

運動をすることで筋力が戻ってきて、基礎代謝も上がってきて、増えてきた体重が徐々に落ちてくる。活動量も増えてきて、体力がついて、徐々に社会生活に復帰できるようになる。体重を落とすにも、心の回復を図るためにも、この時期の運動は欠かせません。

■自分の限界を知る

運動をしてみることで、以前よりもずっと体力が低下しているご自身に気がつくでしょう。無理をしても体が保たない、という現実を思い知ります。

そう、無理をしても体も脳ももたないのです。ところが、抑うつ症状がみられる方の多くは、かつて無理をしてその結果体と脳の調子が崩れてしまった。だからこそ、この時期の運動というのは「今の自分の限界を知る」ための運動でもあります。

毎日コツコツと、5分、10分から始めた運動が20分、30分、1時間とできるようになってくる。続けるほどに少しずつ限界が伸びてくる。でも、その日その日のコンディションによってできない事もある。昨日は30分ウォーキングできたのに今日は5分ももたない・・・。そんな日もあります。でも諦めない、腐らない。

この時期の運動は「調子がいい時も悪い時もある自分の体との付き合い方を学ぶ」体験にもつながります。30分のウォーキングができない日には、調子が悪い時なりにできそうなことをすれば良いのです。ラジオ体操ならできそうなのか、ストレッチならできるのか。この“できないなりにできそうなことを見つける作業”は、社会復帰後にもとても役に立ちます。

社会復帰して仕事を始めても、同じように調子の良い日と悪い日の波がきます。でもこの調子が良い日と悪い日というのは、0か1か、ではなく0%〜100%の間での変動があるはずです。人間はいつも100%のパフォーマンスを発揮できるわけではない。だとしたら、40%の時には40%なりにできること、20%なら20%なりにできることがあるはず。お仕事でも同様で、会議やプレゼンや営業といったエネルギーの必要な仕事は70%くらいの時にしかできないけど、データ入力や書類整理なら30%の時でもできそうだ、といった事があるでしょう。

その時その時の限界がわかってくると、今何ならできそうかが見えてきます。

このように、体の中で何が起きているのかを知ることで、焦らずご自身の心と体と付き合っていく方法がわかってくるかと思います。


ここまで目を通してくださってありがとうございます。

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有資格者の心理カウンセラーが自身のうつ病経験のしくじり体験談やそこから復職にいたるまでのコツや、病気と付き合う為のノウハウを記事にしています。遠隔カウンセリングも行っておりますので、なかなか外に出るのが難しかったり直接人と会うのが苦手な方もお気軽にお問い合わせ下さい☺️