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悲しい時

いつだったか、悲しい時には悲しい曲を聴いた方がいいんだよ、と聞いたことがある。 なんでも悲しい曲調が自分の悲しい気持ちを肯定してくれるからだとか、詳細は覚えていない。 どうしようもなく悲しい時があった。 それでも動かなければならなかったから、私は先の言葉をすがるように思いつく限りの悲しい曲を聴いた。 チャイコフスキーの悲愴の第4楽章。 ニ長調の旋律があまりに美しいほどわが身の拙さを突き付けられるようで涙がぼろぼろこぼれた。 途中からあまりの大音量がその時の私には喧しく感

    • アンダンテスピアナート

      私にとって天国を連想する曲が2つある。 そのうちの1つがアンダンテスピアナートだ。 マウリツィオ・ポリーニが亡くなった。 人の死を1つ2つと数えるのは違うと思いつつ、小澤征爾の訃報から間もない著名なピアニストの死。 幼い頃から、遠方に住む自分の祖父の顔以上に、テレビで、CDのジャケットで見てきた音楽家の死。 私はポリーニの熱狂的な信者というわけではない。 むしろ楽譜が苦手という性格の私にとって、楽譜を見られないならせめてこれを耳で真似してくれと言わんばかりに聞かされてき

      • 更級日記

        タイトルを考えて更級日記と浮かんだ時、同じタイトルの文章なんてごまんとあるだろうと思って苦笑いを浮かべつつ調べたわけだが、驚くほどなかった。 たいそうな文学の名前を自分の走り書きにつけるなんてばからしいこと、おおよそ誰も思わないのだろうか。 「あなたは更級日記の少女なのね。もう、何を言っても仕方が無い。」 私は更級日記の少女なのだろうか。いやそうでなかったとしても。 人は矛盾をたくさん抱えているものだろうか。 私はその矛盾が極端なことが多い。 その極端な矛盾に陥っ

      悲しい時