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「成長の先にあった2つ目の壁」20-21 PL 第25節 アーセナル×マンチェスター・シティ レビュー

前節でリーズとの打ち合いゲームを制し勢いにのるアーセナルだったが、ミッドウィークのヨーロッパリーグではベンフィカ相手に1-1のドロー。アウェイゴールを奪ったものの次回対戦に向けて余裕は無く、全く油断はできない状況に。

そんな状況で戦う今節の対戦相手は、マンチェスター・シティ。現在プレミアリーグ12連勝中で首位をひた走る絶好調のチーム。暫定10位のアーセナルにとって間違いなく格上となる対戦相手。しかし、この後に中3日で絶対に落とすことのできないヨーロッパリーグが控えている事を考えると、どちらを優先するか決断が難しい状況で挑む試合となった。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・マンチェスター・シティ(監督:ペップ・グアルディオラ)
フォーメーション:4-1-2-3

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ヨーロッパリーグを見据えてか、アーセナルは数名を入れ替え。ティアニーとマリが怪我から復帰しスタメンに名を連ね、負傷離脱中のトーマスの代役はエルネニーを起用。スミス=ロウを休ませてペペを起用した。
マンチェスター・シティも同様にチャンピオンズリーグを見据えたのか、アンカーにはロドリではなくフェルナンジーニョを起用。怪我から復帰したデブライネは7試合ぶりの先発起用。前線中央にB.シルバを起用し、ゼロトップのシステムを採用してきた。

■ 前半①:個+個で打開

試合は開始早々に動く。マンチェスター・シティのボール保持からDFのルベンディアスが右サイド大外で待っていたマフレズへ精度の高い対角のロングフィード。これをマフレズがピタッと足元にトラップし、簡単にティアニーとの1対1の状況を作る。マフレズは得意のドリブルを仕掛け、ティアニーを半身かわしたところで中央へクロス。これをスターリングが頭で決めてマンチェスター・シティが開始わずか2分で先制に成功。

ルベンディアスの視野の広さとボールを供給すべきところを的確に判断する能力、そして正確にボールを届けるキック精度の高さという個の能力。そしてマフレズのドリブルで簡単に1枚2枚の守備者をかわしてしまうような個の能力。それらの個の能力の高さを活かしたゴールだった。

アーセナルとしては、ルベンディアスをフリーにさせないようにしたかったところだが、この試合では守備の仕組みから彼をフリーにせざるを得ない状況が多かった。(これに関しては後述)それを考えるとティアニーがマフレズに寄せきってクロスを上げさせないか、ホールディングがスターリングのマークを離さないようにすべきだった。

■ 前半②:アーセナルのシティ対策

マンチェスター・シティのビルドアップは、右SBのカンセロがCHに上げルベンディアスを中心にした3-1の配置で実行。両WGをサイド奥に張らせてアーセナルのSBをピン留めし、中央のスペースを狙ってくる。

これに対してアーセナルは、前節リーズ戦と同じようなマンマークを主体にした守備で対策。オーバメヤンは左側からストーンズに、ペペは右サイドからジンチェンコにプレス。アンカーのフェルナンジーニョにはウーデゴールがマンマークにつき、CHのデブライネとギュンドアンにはジャカとエルネニーがマンマークにつく。偽SBとして振る舞うカンセロに対しては、サカがマンマークについてマンチェスター・シティのビルドアップを牽制した。

これによりフリーになるのは、ルベンディアス。彼を自由にさせまいとペペやオーバメヤンがプレスにいくとジンチェンコやストーンズが空いてしまい、そこからボールを前進させられる。うまくプレスがかかったとしても後ろに下げればキック精度の高いGKエデルソンが控えている。アーセナルとしては、ルベンディアスに自由を与えることを許容するしかない状況を作られることになっていた。

ルベンディアスをフリーにしても出口を抑えてボールの奪取を狙うアーセナル。しかし、ここでも優位に立ったのはマンチェスター・シティ。中央の3枚にマンマークがついているならと、ゼロトップのB.シルバが中盤へ下がってビルドアップの出口となる。それでもアーセナルは、CBのマリがそのままB.シルバへついていくなど対策したものの、マンチェスター・シティはポジションチェンジをうまく活用してマンマークのズレを作り出し前進。アーセナルは対応できず、終始ボール保持を許す展開になっていた。

■ 前半③:超えられない2つ目の壁

アーセナルのビルドアップに対して、マンチェスター・シティは4-2-4の形で前から積極的なプレッシング。これは前回対戦時と同様の形。前回対戦時、アーセナルはショートパスでつなぎきれずロングボールで逃げるしか出来なかった。しかし、今節は勇気を持ってショートパスで対峙。マンチェスター・シティの4枚のファーストディフェンスラインに対してSBを低い位置に下げるなどして苦労しながらもボールを前進させる。

ビルドアップの出口になっていたのは、主にハーフスペースにポジショニングしたサカ。彼にはフェルナンジーニョが主にマークについており、ここをかわすことが出来ればファイナルサードまで持っていける状況。しかし、ここで少しでも前進を止められてしまうと一気に前線4枚のプレスバックが襲いかかる。

アーセナルはビルドアップにSBを下げるなどして枚数を割いているので、ビルドアップの出口までボールを運べても、その位置のサポート枚数が少ない状況になってしまう。これにより、マンチェスター・シティの前線4枚の壁を超えられても、中盤に配された2枚めの壁を超えることが出来ない状況になっていた。

なんとか2枚めの壁を超えることが出来ても、時間を遅らされていることでその間にマンチェスター・シティはしっかりと守備ブロックを形成。アーセナルにスペースを与えない。

前線では4-2-4、中盤では4-4-2、撤退時は4-5-1のように、フェーズに応じた連動した守備でアーセナルを完全に封じ込めたマンチェスター・シティ。このまま得点は動かず0-1で前半を終える。

■ 後半:打つ手なしのアーセナル

アーセナルは、前半と同様に我慢の時間帯が続く。マンマークを流動的に受け渡しつつ何とか守りカウンターを狙う。しかし、オーバメヤン、ペペは封じられ、頼れるのは引き続きサカぐらい。彼のハーフスペースでのボールの引き出し方、引き出した後のドリブルでの打開は効果的だったものの、マンチェスター・シティの守備により前後を分断されるような形で最後まで良い形で攻めきることが出来ないアーセナル。

63分にはマンチェスター・シティが怪我明けのデブライネを下げて、ワントップにジェズスを投入。ゼロトップだったB.シルバがCHへ下がる。運動量のあるB.シルバがCHに下がったことで、マンチェスター・シティの守備は更に向上。アーセナルは縦パスを通すことすら厳しくなってくる。

アーセナルは、73分にペペとウーデゴールを下げてスミス=ロウとラカゼットを投入。86分にはセバージョスも投入して何とか1点を奪いに行くがマンチェスター・シティの牙城は崩せず。このまま0-1で試合終了となった。

■ 試合結果

Arsenal 0 × 1 Manchester City

■ 得点
2分:スターリング(アシスト:マフレズ)

■ 交代
63分:デブライネ → ジェズス
73分:ウーデゴール → ラカゼット
73分:ペペ → スミス=ロウ
82分:ホールディング → ダビド・ルイス(脳震盪による交代)
86分:エルネニー → セバージョス

■ 試合ハイライト

■ あとがき

スコアは1点差であるものの、チームとしての完成度では大きな差を見せつけられた今節。前回対戦時も結果は1-0の1点差。同じスコアではあるものの、少なからず成長の証は感じられた。

前回対戦時には、ショートパスでビルドアップ出来ずに苦しめられていたが、今回は勇気を持ってショートパス主体でビルドアップにチャレンジ。苦労したものの、各選手の配置的優位で何度かうまくのファーストディフェンスラインを突破できていた。

かなり強度、精度の高いマンチェスター・シティのプレスをはがして前進出来ていたことはポジティブ。間違いなくチームとして成長はしていると感じる。その後の課題は、さらなる連動性の向上か、もしくは個の優位性が必要になるかもしれない。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista