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「垣間見えたチームの成長」20-21 PL 第23節 アストン・ヴィラ×アーセナル レビュー

前節2人の退場者を出し、逆転負けを喫したアーセナル。前半は素晴らしい立ち上がりを見せたものの、自らのミスと厳しい判定により敗戦。完璧に近かった前節の前半がチームとしての積み上げであることを証明するためにも、今節は内容も伴いつつ勝利を収めたい。

今節の対戦相手アストン・ヴィラは、アーセナルよりも消化試合が2試合少ないにも関わらず暫定9位と順位は上に位置している。今シーズン躍進しているチームのひとつ。アーセナルとしては、前回対戦時に大敗し、そこからリーグ戦7戦未勝利と泥沼にハマるきっかけとなった相手だけに、ここで勝利を収めて雪辱を果たしたい相手でもある。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アストン・ヴィラ(監督:ディーン・スミス)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1

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前節2人の退場者を出してしまったアーセナルは、ダビドルイスの代わりにマガリャンイス、レノの代わりにこの冬にブライトンからレンタルで獲得したライアンを起用。ライアンはこれがアーセナルデビューの試合に。好調のぺぺはスタメンに、オーバメヤンは控えにまわしたメンバー選考となった。

■ 前半①:許してはいけない先制点

アストン・ヴィラは、ここまで20試合を消化しクリーンシートが10試合。半分を無失点で終えているという守備の固いチーム。その固い守備を最後尾で支えているのが元アーセナルのマルティネス。彼の活躍は嬉しいけれど今節だけは活躍しないで欲しい。そんな気持ちのグーナーも多いことだろう。

しかし、グーナーの気持ちを他所に試合がいきなり動く。マルティネスが得意とする低く早い弾道のキックから右サイドのトラオレがレイオフしマッギンへ。マッギンはアーリークロスを選択するが、これをマガリャンイスがカットしボールはセドリックの元へ。セドリックはマガリャンイスへリターンパスを選択するが、このパスが短くトラオレに奪われてしまう。マガリャンイスが止めに行くもののスピードに乗ったトラオレを止められず。突破から中央マイナスの位置へ折り返され最後はワトキンスがゴール。

アーセナルは試合開始早々にミスから失点を喫することに。守備の固いアストン・ヴィラ相手に1番与えてはいけない先制点を与えてしまう結果となってしまった。

◼ 前半②:堅いアストン・ヴィラ

アーセナルのゲームモデルはここ数試合と同じ。ビルドアップではジャカが落ちる3-1の形をベースにビルドアップ。ビルドアップの出口になるのは、相手のCB-CH間に入るラカゼットやスミス=ロウ。しかし、アストン・ヴィラはここを自由にやらせない。特にCHの2枚、マッギンとナカンバがアーセナルの縦パスが入らないようにポジショニングし、攻撃のスイッチを入れさせない。アーセナルは中央を使えずSBからの前進を強いられる形になる。

なかなか中央を使えないアーセナル。それならと相手を引き込んでカウンターで糸口を掴みにかかる。しかし、アストン・ヴィラは被カウンターでも守備の固さを見せる。ネガティブトランジションでは、ボール周辺の選手2〜3名がプレスをしかけボールホルダーから自由を奪う。その隙に他の選手は一気に帰陣。アーセナルに自陣側へボールを下げるセーフティなボール保持を強いることでカウンターを防いでいた。

アーセナルがボール保持からアストン・ヴィラ陣地深くまで侵入した際にも守備の堅さは目を見張るものがあった。DFライン4枚でペナルティエリアの幅に壁を作る。大外レーンには両SHが戻って守備。CB-CH間も狭くスペースを与えない。これだけ固い守備をこじ開けるには、セットプレーなどの飛び道具か圧倒的な個の能力で無理やり突破する力が必要。しかし、28分のジャカの素晴らしい直接フリーキックはマルティネスに止められ、両サイドのドリブル突破もキャッシュ、ターゲットといった対人守備の強いSBの前に沈黙。アーセナルはボールを保持するも突破口を見いだせないまま前半が終了。

■ 後半①:リズムを生み出すポストプレー

1点ビハインドの状況で巻き返しを図りたいアーセナルだったが、後半に良い入り方をしたのは、どちらかというとアストン・ヴィラの方。カウンターをベースに何度もアーセナルゴールへ襲いかかる。

ただ、アーセナルもただやられているわけではない。自陣からのビルドアップでラカゼットまたはスミス=ロウがミドルサードで出口になると、ここにアストン・ヴィラのCBが食いついてくる。ここでラカゼットやスミス=ロウが周囲の味方へボールを預けることが出来ればチャンス。ミングスが空けた穴を埋めるためにアストン・ヴィラは後手に回ることになる。

こうしてポストプレーを用いながらからボールを前後に素早く動かすことでアストン・ヴィラの守備陣形を徐々に崩し始めたアーセナル。しかし、フィニッシュの局面でアストン・ヴィラの守備陣が踏ん張り、得点を奪うことが出来ない。

最後の局面でフィニッシュを成功させたいアーセナルは、59分にラカゼットに変えてオーバメヤンを投入。ペナルティエリア内で決定的な仕事を期待しての交代だろう。ゴールをこじ開けたいアーセナルは、65分に2枚めの交代カードを切る。SBのセドリックを下げてトップ下のウーデゴールを投入。これにより左SBにはサカ、トップ下だったスミス=ロウが右SHへ回る。

■ 後半②:流動的なポジショナルプレー

小気味よいテンポでパスを回しながらアストン・ヴィラ陣地の深い位置まで攻め込めるようになってきたアーセナル。特にSBにサカ、WGにペペがいた左サイドは強力な武器になっており、何度もペナルティエリア内へ侵入出来ていた。もう少しでゴールを奪えるのではないかと感じはじめた74分、まさかのトーマスが負傷でピッチを後にすることに。代わりに投入されたのはウィリアン。これにより、ジャカがアンカー、CH2枚をウーデゴールとスミス=ロウ、右WBにペペ、左WGにウィリアンを配置した4-1-2-3のフォーメーションへ変更した。

急遽採用したかに思えた4-1-2-3だったが、内容は上々。各々の選手がポジションチェンジしながら適切な距離感と角度でサポートに入る位置取りを行っており、流動的なポジショナルプレーを展開する。特に83分のシーンでは、ビルドアップから連動したパス交換で左サイドを突破し、ゴール前で決定的なチャンスを創出。しかし、フィニッシュの局面でウーデゴールのシュートが枠外へ飛んでしまい、ゴールには至らなかった。

流動的なポジショナルプレーでサイドは何度も崩すものの、アストン・ヴィラの中央守備が堅く、ゴールを奪えないアーセナル。完璧に崩すためには、もう2~3手手前でCBを釣り出すような中央へのくさびのパスが必要に見えた。タラレバになってしまうが、ラカゼットがいれば中央を使うことが出来て更に崩しのバリエーションが増えたかもしれない。

後半はかなりアストン・ヴィラを押し込んだものの、堅守の前にゴールは奪えず。結局このまま1-0でアーセナルが敗戦となった。

■ 試合結果

Aston Villa 1 × 0 Arsenal

■ 得点
2分:ワトキンス(アシスト:トラオレ)

■ 交代
59分:ラカゼット → オーバメヤン
65分:セドリック → ウーデゴール
66分:トラオレ → トレゼゲ
74分:トーマス → ウィリアン(負傷交代)
78分:バークリー → ラムジー

■ 試合ハイライト

■ あとがき

後半、良いリズムで試合を展開することが出来たアーセナル。しかし、結局は最後まで崩し切ることが出来ず得点は奪えなかった。アストン・ヴィラのように堅守を誇るチーム相手に引いた守備ブロックを崩すほどの力は、残念ながら今のアーセナルにはまだない。つまり、このようなチームに先制点を奪われてはいけない。そういった点では、試合開始早々のミス絡みの失点は非常にもったいなかった。反省すべき点だ。

システム変更で披露した4-1-2-3は、得点こそ奪えなかったものの、内容は非常に良かった。選手の距離感やポジショニング、ベジェリンの偽SBの位置取りなど急造とは思えない仕上がり。ここまでの積み上げとチームとしての成長を感じさせた時間だった。もしかするとアルテタはこの4-1-2-3に向けて着々と準備を進めているのかもしれない。

ただ、この4-1-2-3のシステムは守備が課題に見えた。特にネガティブトランジションの局面では中盤底のポジションに枚数が少ないことから強度不足を感じさせる。そのため、まだスタートからこのシステムは機能しなさそうに見えた。とはいえ、今回の試合のように得点を奪いに行く時のオプションにはなりえる。これから精度が上がってくることに期待したい。

前節も今節もミス絡みで敗戦したものの、内容は悪くないように見える。徐々にではあるがチームとしての積み上げも感じる。しかし結果は連敗。順位もボトムハーフに戻り、上位陣との勝点も開き始めている。もうこれ以上の連敗は許されない。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista